著者
櫻井 孝志 立松 秀樹 山高 浩一 山本 貴章 有澤 淑人 川原 英之
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.234-239, 2003-03-01
被引用文献数
6

症例は84歳の女性。平成14年2月腹痛・嘔吐・下痢・血便を主訴に入院。既往歴として高血圧・狭心症・糖尿病があり内服治療中であった。便細菌培養にて病原性大腸菌O-1を検出, CT・下部消化管内視鏡検査にて下行結腸に壊死を伴う炎症を認め, 細菌性腸炎による脱水を誘因とした虚血性大腸炎と診断した。入院翌日のCEAが106.1ng/mlと異常高値を示し, 悪性腫瘍の検索を行ったが病変を認めず。26日後のCEA再検査では正常化していた。3月13日下行結腸切除術および人工肛門造設術施行した。病理診断上悪性所見を認めず, 免疫組織化学染色によるCEA局在も正常であった。検索上, 虚血性腸炎におけるCEA上昇は, 今らの1例報告のみであった。CEA高値を呈した機序は不明であった。発症時に細菌性腸炎に罹患していたことによるCEA産生活性化の可能性や, 膿瘍腔内に便汁が多量に貯留した可能性などの複合的な要素の関与が考えられた。
著者
石原 雅巳 寺本 龍生 松井 孝至 千葉 洋平 山本 聖一郎 安井 信隆 石井 良幸 奈良井 慎 立松 秀樹 小林 直之 徳原 秀典 渡邊 昌彦 北島 政樹 倉持 茂
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.440-445, 1990-06
被引用文献数
6

症例は22歳の男性.1995年5月,排便困難,血便を主訴に近医を受診した.直腸癌の疑いで当院を紹介され1995年5月29日,入院となった.注腸造影,大腸内視鏡検査では肛門縁より約7cmの直腸左壁を中心とし半周性の隆起を主体とした腫瘤の集蔟を認め,感染性腸炎を疑わせる所見であった.生検の病理組織像は形質細胞の多い非特異的炎症のみであった.梅毒血清反応が陽性であったことから,梅毒性の直腸炎と診断し,駆梅療法を開始した.開始後,梅毒血清抗体価の低下にともない病変の縮小を認め,治療後約4カ月で梅毒血清抗体価の陰性化と病変の消失を認あた.さらにTreponema pallidum(以下T.p.)に対する抗体を用いた酵素抗体法によりT.p.が生検部の病理組織より証明され,梅毒性直腸炎の確定診断がされた.