著者
種村 宏之 後藤 友彦 高塚 純 中崎 晴弘 寺本 龍生
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.91-95, 2006-02-01
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

結核性痔瘻は稀とされている.我々は1985年から2003年までの18年間に痔瘻の膿から結核菌が証明されたll例を経験したので,これを報告する.平均年齢は43.8歳でいずれの症例も男性であった.全例結核治療のため当院紹介された.痔瘻はIILSが10例,IIIBが1例であり,6~7時方向の痔瘻が7例,2~3時方向が3例,11時方向が1例であった.結核性の粘膜病変を認めなかったことから,いずれの症例も以前からある痔瘻に結核菌が2次感染をおこしたものと考えられた。結核治療を開始し,排菌が停止したことを確認したのち根治術を行った.現在までのところ再発を認めていない.
著者
石井 良幸 渡辺 昌彦 山本 聖一郎 千葉 洋平 石原 雅巳 奈良井 慎 寺本 龍生 北島 政樹
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.2307-2311, 1997-12-01
参考文献数
10
被引用文献数
11

先天性 AT-III 欠乏症を伴う広範な静脈血栓症が誘因となり腸閉塞をきたし, 開腹手術および保存的治療によち軽快した症例を経験したので報告する. 症例は38歳の男性で, 平成7年1月2日に他院にて急性腹症の診断のもと開腹され, 特発性腸間膜静脈血栓症による腸膜壊死に対し空腸部分切除術が施行された. 退院後, 嘔吐が出現し, 近医にて腸閉塞と診断され保存的に治療されていたが軽快せず, さらに門脈血栓症が認められたため, 3月20日に当科に転院となった. 精査にて先天性 AT-III 欠乏症と診断, また小腸に強度の狭窄を認めたため保存的治療を行いつつ, 5月10日に腸閉塞解除術を施行したが血栓症の増悪なく, 7月30日に軽快退院した. 本症例は先天性 AT-III 欠乏症が基盤にあり, 腹部の広範な血栓症を伴っていたが, AT-III 製剤やヘパリン, ワーファリンの投与により術後血栓症を回避し救命しえた貴重な1例である.
著者
戸倉 夏木 金子 弘真 伊藤 正朗 名波 竜規 本田 亮一 渡邊 正志 寺本 龍生
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.522-527, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

癌終末期の消化管閉塞による悪心, 嘔吐, 腹部膨満感は患者のquality of lifeを損なう. オクトレオチドは, これらの症状を緩和すると報告されている. 2004年10月にオクトレオチドが保険適応となり一般病棟でも消化管閉塞患者に使用可能となった. 我々は2005年5月から2006年3月までに, 癌終末期消化管閉塞患者7例にオクトレオチドを使用し良好な結果を得た. 平均年齢は67.3±11.2歳, 男性4例, 女性3例で, 胃癌3例, S状結腸癌, 上行結腸癌, 膵臓癌, 原発不明癌が各1例であった. 悪心, 嘔吐, 腹部膨満感はJCOG toxicity scaleでgradeが全例低下し, 5例は経口摂取が可能となった. オクトレオチド投与後, 全例経鼻胃管を挿入することはなく, 輸液も減量することができた. 我々消化器外科医もオクトレオチドを手術適応のない癌終末期消化管閉塞患者の第1選択薬として考えるべきである.
著者
石原 雅巳 寺本 龍生 松井 孝至 千葉 洋平 山本 聖一郎 安井 信隆 石井 良幸 奈良井 慎 立松 秀樹 小林 直之 徳原 秀典 渡邊 昌彦 北島 政樹 倉持 茂
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.440-445, 1990-06
被引用文献数
6

症例は22歳の男性.1995年5月,排便困難,血便を主訴に近医を受診した.直腸癌の疑いで当院を紹介され1995年5月29日,入院となった.注腸造影,大腸内視鏡検査では肛門縁より約7cmの直腸左壁を中心とし半周性の隆起を主体とした腫瘤の集蔟を認め,感染性腸炎を疑わせる所見であった.生検の病理組織像は形質細胞の多い非特異的炎症のみであった.梅毒血清反応が陽性であったことから,梅毒性の直腸炎と診断し,駆梅療法を開始した.開始後,梅毒血清抗体価の低下にともない病変の縮小を認め,治療後約4カ月で梅毒血清抗体価の陰性化と病変の消失を認あた.さらにTreponema pallidum(以下T.p.)に対する抗体を用いた酵素抗体法によりT.p.が生検部の病理組織より証明され,梅毒性直腸炎の確定診断がされた.
著者
亀井 秀策 寺本 龍生 渡邊 昌彦 石井 良幸 遠藤 高志 橋本 修 北島 政樹 向井 万起男
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.52, no.8, pp.725-729, 1999-08
被引用文献数
6 5

症例は37歳女性で, 1997年より強迫神経症にて他院入院中であった.1998年2月中旬より間欠的に腹痛を認めていたが, 3月5日疼痛著明となり腹部CT検査を施行され, 内ヘルニアまたは腸軸捻転症の疑いで翌6日当院を紹介され受診した.右回盲部に有痛性で弾性軟の手拳大の腫瘤を触知し, 腹部CTにて境界明瞭で数層の壁構造よりなる腫瘤を認め, 腸重積の診断にて緊急手術を施行した.開腹すると重積のため著明に肥厚した上行結腸を認め, 整復不能と判断し結腸右半切除術を施行した.切除標本では潰瘍形成を伴う盲腸腫瘍を認め重積の先進部となっていた.病理組織学的診断はneuroendocrine carcinomaであった.
著者
加瀬 卓 小平 進 寺本 龍生 久 晃生 古川 和男 山口 博 捨田利 外茂夫 長谷川 博俊 郭 宗宏 西堀 英樹 北島 政樹 向井 万起男
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.25, no.7, pp.2055-2059, 1992-07-01
被引用文献数
11

1970年1月から1991年9月までに当教室において経験した,痔瘻に随伴した肛門管癌7例について検討した.7例のうちわけは男性6例,女性1例で,年齢は43〜77歳(平均59.1歳)であった.痔瘻または膿瘍発症から癌確診までの期間は4年〜47年(平均22.9年)であった.主訴として粘液分泌,肛門部痛,腫瘤・硬結触知,出血,肛門狭窄,などが認められた.7例全例に腹会陰式直腸切断術が施行され治癒切除4例,非治癒切除3例であった.組織型は粘液癌3例,高・中分化腺癌3例,扁平上皮癌1例であった.7例中4例は,初回生検で確定診断可能であったが,残りの3例は癌確診までに頻回の診断手技を要した.長期にわたり痔瘻を有し,粘液分泌,腫瘤・硬結触知などの症状を呈する症例については癌の合併を考慮し瘻管切除を含む頻回の生検を施行して確定診断を下すべきであると考えられた.