著者
濱田 孝喜 貞清 正史 坂 雅之 竹ノ内 洋 伊藤 一也 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1577, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】野球では外傷よりも野球肩などスポーツ障害の発生率が高いことが知られている。近年,肩後方タイトネス(PST)に起因する肩関節内旋可動域制限の存在が示され,PSTと投球障害肩発生との関連性が示唆されたが,高校野球においてPSTおよび肩関節可動域制限の予防策の実施状況は報告されていない。また,予防策実施と肩障害発生率との関係性は示されていない。そこで本研究の目的を高校野球において,肩関節可動域制限の予防策の実施状況および予防策実施と肩関節痛の存在率との関連性を解明することとした。【方法】長崎県高等学校野球連盟加盟校全58校へアンケート用紙を配布し,アンケート調査を高校野球指導者と選手に実施した。指導者には練習頻度・時間,投球数に関する指導者の意識調査,選手には肩障害の有無・既往歴,ストレッチ実施状況・種類などを調査した。調査期間は平成25年1月から3月であった。【倫理的配慮,説明と同意】アンケート調査は長崎県高校野球連盟の承諾を得た上で実施された。アンケートに係る全ての個人情報は調査者によって管理された。【結果】1.選手:対象58校中27校,673名から回答を得た。対象者は平均年齢16.5歳,平均身長170.1cm,平均体重66.1kgであった。アンケート実施時に肩痛を有していた者は全体の168/673名(24.9%)であり,肩痛の既往がある者は全体の367/673名(54.5%)と約半数にのぼった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は147/167名(88%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は422/490名(86%)であった。投手のみでは,肩痛を有する者が22/133名(16.2%),肩痛の既往は82/136名(60.3%)であった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は20/22名(90.9%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は107/111名(96.4%)であった。2.指導者:58校中24校,33名から回答を得た。練習頻度では,週7日が9/24校(38%),週6日が13/24校(54%),週5日が8%(2校)であった。練習時間(平日)では,4-3時間が14/24校(58%),2時間以下が9/24校(38%),回答なしが1校であった。練習時間(休日)では,9時間以上が2/24校(8%),7-8時間が8/24校(33%),5-6時間が9/24校(38%),4-3時間が5/24校(21%)であった。投球数(練習)では50球以下が3%,51-100球が24%,101-200球が24%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。投球数(試合)では50球以下が0%,51-100球が9%,101-200球が42%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。3.指導者意識と肩痛:投手の練習時全力投球数を制限している学校は12校,制限ない学校は12校であった。全力投球数制限ありの投手は45名で,肩痛を有する者は8/45名(18%),肩痛が無い者は37/45名(82%)であった。全力投球数制限なしの投手は60名で,肩痛を有する者は11/60名(24%),肩痛が無い者は49/60名(75%)であった。【考察】肩関節痛を有する者は全体の24.9%,投手のみでは16.2%であり,肩痛の既往歴が全体の51.5%であった。ストレッチ実施状況は肩痛の有無に関わらず約80%の選手が実施していた。肩関節可動域制限に対してスリーパーストレッチ,クロスボディーストレッチによる肩関節可動域改善効果が報告されている。本研究ではストレッチ実施の有無を調査しているためストレッチ実施方法の正確性は明らかではないが,ストレッチのみでは投球障害肩予防への貢献度は低いことが考えられる。障害予防意識に関して練習時・試合時共に制限をしていない指導者が48%であった。高校生の全力投球数は1日100球以内と提言されているが,部員が少数である高校などの存在は考慮せざるを得ない。練習時全力投球数を制限している者のうち肩痛を有する者は18%,制限の無い者のうち肩痛を有する者は24%であった。1試合または1シーズンの投球数増加は肩障害リスクを増大させると報告されている。アンケート調査を実施した期間はオフシーズンであり,指導者の投球数に関する意識が選手の肩障害に関与する可能性があると考えられる。以上より,高校野球選手において一定の効果があるとされるストレッチを約8割の選手が実施していたにも関わらず肩痛の存在率は高かった。この原因としてストレッチ方法の正確性及びオーバーユースや投球動作など他因子との関連が考えられる。今後はこれらの関係性を明確にし,障害予防方法の確立が重要課題である。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場において障害予防は重要課題である。これまで障害予防方法の検証はされてきたが,現場ではその方法が浸透していないことが示唆された。医学的知識や動作指導が可能な理学療法士の活躍がスポーツ現場での障害予防に必要である。
著者
濱田 孝喜 貞清 正史 坂 雅之 竹ノ内 洋 伊藤 一也 蒲田 和芳
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】野球では外傷よりも野球肩などスポーツ障害の発生率が高いことが知られている。近年,肩後方タイトネス(PST)に起因する肩関節内旋可動域制限の存在が示され,PSTと投球障害肩発生との関連性が示唆されたが,高校野球においてPSTおよび肩関節可動域制限の予防策の実施状況は報告されていない。また,予防策実施と肩障害発生率との関係性は示されていない。そこで本研究の目的を高校野球において,肩関節可動域制限の予防策の実施状況および予防策実施と肩関節痛の存在率との関連性を解明することとした。【方法】長崎県高等学校野球連盟加盟校全58校へアンケート用紙を配布し,アンケート調査を高校野球指導者と選手に実施した。指導者には練習頻度・時間,投球数に関する指導者の意識調査,選手には肩障害の有無・既往歴,ストレッチ実施状況・種類などを調査した。調査期間は平成25年1月から3月であった。【倫理的配慮,説明と同意】アンケート調査は長崎県高校野球連盟の承諾を得た上で実施された。アンケートに係る全ての個人情報は調査者によって管理された。【結果】1.選手:対象58校中27校,673名から回答を得た。対象者は平均年齢16.5歳,平均身長170.1cm,平均体重66.1kgであった。アンケート実施時に肩痛を有していた者は全体の168/673名(24.9%)であり,肩痛の既往がある者は全体の367/673名(54.5%)と約半数にのぼった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は147/167名(88%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は422/490名(86%)であった。投手のみでは,肩痛を有する者が22/133名(16.2%),肩痛の既往は82/136名(60.3%)であった。疼痛を有する者のうちストレッチを毎日または時々実施している者は20/22名(90.9%)であった。疼痛の無い者のうちストレッチを実施している者は107/111名(96.4%)であった。2.指導者:58校中24校,33名から回答を得た。練習頻度では,週7日が9/24校(38%),週6日が13/24校(54%),週5日が8%(2校)であった。練習時間(平日)では,4-3時間が14/24校(58%),2時間以下が9/24校(38%),回答なしが1校であった。練習時間(休日)では,9時間以上が2/24校(8%),7-8時間が8/24校(33%),5-6時間が9/24校(38%),4-3時間が5/24校(21%)であった。投球数(練習)では50球以下が3%,51-100球が24%,101-200球が24%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。投球数(試合)では50球以下が0%,51-100球が9%,101-200球が42%,201球以上が0%,制限なしが48%であった。3.指導者意識と肩痛:投手の練習時全力投球数を制限している学校は12校,制限ない学校は12校であった。全力投球数制限ありの投手は45名で,肩痛を有する者は8/45名(18%),肩痛が無い者は37/45名(82%)であった。全力投球数制限なしの投手は60名で,肩痛を有する者は11/60名(24%),肩痛が無い者は49/60名(75%)であった。【考察】肩関節痛を有する者は全体の24.9%,投手のみでは16.2%であり,肩痛の既往歴が全体の51.5%であった。ストレッチ実施状況は肩痛の有無に関わらず約80%の選手が実施していた。肩関節可動域制限に対してスリーパーストレッチ,クロスボディーストレッチによる肩関節可動域改善効果が報告されている。本研究ではストレッチ実施の有無を調査しているためストレッチ実施方法の正確性は明らかではないが,ストレッチのみでは投球障害肩予防への貢献度は低いことが考えられる。障害予防意識に関して練習時・試合時共に制限をしていない指導者が48%であった。高校生の全力投球数は1日100球以内と提言されているが,部員が少数である高校などの存在は考慮せざるを得ない。練習時全力投球数を制限している者のうち肩痛を有する者は18%,制限の無い者のうち肩痛を有する者は24%であった。1試合または1シーズンの投球数増加は肩障害リスクを増大させると報告されている。アンケート調査を実施した期間はオフシーズンであり,指導者の投球数に関する意識が選手の肩障害に関与する可能性があると考えられる。以上より,高校野球選手において一定の効果があるとされるストレッチを約8割の選手が実施していたにも関わらず肩痛の存在率は高かった。この原因としてストレッチ方法の正確性及びオーバーユースや投球動作など他因子との関連が考えられる。今後はこれらの関係性を明確にし,障害予防方法の確立が重要課題である。【理学療法学研究としての意義】スポーツ現場において障害予防は重要課題である。これまで障害予防方法の検証はされてきたが,現場ではその方法が浸透していないことが示唆された。医学的知識や動作指導が可能な理学療法士の活躍がスポーツ現場での障害予防に必要である。
著者
重松 康志 横山 茂樹 竹ノ内 洋 塩塚 順
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0976, 2004

【はじめに】<BR>(社)長崎県理学療法士会では平成11年より全国高等学校野球選手権長崎大会準々決勝からスポーツ外傷(以下、外傷)の予防やリコンディショニングを目的として、現場に会員を派遣してストレッチングやアイシング等のサポート活動を実施してきた。この活動を通して、外傷を有する選手が不安を抱えたまま試合に出場することもしばしば見受けられた。この現状を踏まえ、長崎県高校野球連盟(以下、高野連)と協力して、試合等で発生した外傷の状況とその経過を把握することを目的に調査を実施したので報告する。<BR>【対象および調査方法】<BR>県下高等学校硬式野球部所属の選手を対象に自己記述選択方式でアンケート調査を行った。内容は、「スポーツ外傷の有無・部位・状態」「復帰状況」「通院形態」等17項目について調査した。高野連所属の60校全てから回答があり、内訳は1年生461名、2年生535名、3年生11名、合計1007名であった。調査期間は新人戦終了後の平成15年9月中旬から10月上旬とした。<BR>【結果および考察】<BR>過去6ヶ月以内の外傷は475名(47.1%)で、外傷部位では肩、腰、肘の順に多く、競技特性が見受けられた。また371名(36.8%)の選手が痛み等の自覚症状を持ちながら試合等へ出場する現状が窺われ、外傷を有した選手の約8割に及んだ。一方、外傷予防を意識的に取り組んでいる選手は790名(78.5%)であり、関心が高い傾向にあった。その大半はストレッチングやアイシングの施行等、ウォーミングアップやクーリングダウン(以下、アップ等)を行っていた。このように多く選手が、外傷予防の意識は高く、アップ等を施行しているが、痛みや体調に不安を持つ選手が多い現状から、一般的なストレッチングではなく外傷予防に向けたストレッチング方法等について、我々理学療法士が専門的立場から指導していく事が求められていると考えられた。<BR>通院については、466名(46.3%)の選手が行っており、病院が56.3%、整骨院などが43.6%であった。頻度は、週1回程度の通院が321名中165名(51.4%)、週3回以上が146名(45.5%)、毎日通院が10名(3.1%)とごく少数であった。この様に自覚症状を有する殆どの選手は練習に参加しつつ治療に取り組んでいるが、約半数が病院以外で対応されている現状が窺われた。<BR>【まとめ】<BR>今回の調査結果から、過去6ヶ月(約1シーズン)において選手の約半数が痛み等を訴えて通院している現状を窺うことができた。また痛みを持ちながらも試合等へ参加する選手が全体の1/3程度を占めていた。このような状況から選手が痛みを訴えられる環境づくりが必要不可欠である。そのため今後は、選手自身の自己管理能力の向上や指導者の外傷に対する知識の啓蒙活動、さらに地域医療機関と連携できる支援体制を組織化していくことが課題であると思われた。
著者
大山 盛樹 横山 茂樹 重松 康志 谷川 敦弘 中尾 利恵 竹ノ内 洋 塩塚 順
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.C0060-C0060, 2004

【はじめに】平成15年7月28日から8月24日に、長崎県下で全国高等学校総合体育大会「長崎ゆめ総体」が開催された。この大会において(社)長崎県理学療法士会では「社団法人という公益性のある職能団体として地域社会への貢献する」という趣旨から支援活動を展開した。今回、その支援活動の実施状況について報告する。<BR>【活動概要】(目的)選手がよりよいコンディショニングで安全にかつ安心して試合に挑める環境を提供する。(対象競技)サッカー競技・男女バスケットボール競技の2種目3競技とした。(支援体制)競技期間中に、各競技会場に救護班として県士会員を2名ずつ派遣した。(活動内容)参加選手を対象に1)試合前後におけるリコンディショニング、2)RICE等の応急処置、3)医療情報の提供を中心に行った。<BR>【活動状況】(バスケットボール競技)8月2日から7日に男子は4会場、女子は5会場で開催された。参加チームは男女各59校、計118校、試合数は男女とも各々58試合、計116試合であった。派遣した県士会員は延べ64名、実人数50名であった。(サッカー競技)7月29日から8月4日まで6会場で開催された。参加チームは55校であり、試合数は計54試合であった。派遣会員は延べ51名、実人数36名であった。<BR>【実施状況(バスケットボール競技)対応件数は、男子で延べ件数81件、実人数33名、女子で延べ件数32件、実人数25名であった。利用件数は大会前半に集中した。痛みを訴えた選手が最も多く、男子では39件(48%)、女子では26件(81%)であった。傷害部位は、男女とも足関節が最も多かった(30%前後)。施行内容は、男女ともテーピング施行が最も多く(40~50%)、次いでアイシングが占めた。(サッカー競技)対応件数は延べ件数71件、実人数50名であった。利用件数は大会前半戦に集中していた。主訴は痛みが最も多く、56件(78.9%)であった。傷害部位について足関節が33件(44%)と最も多かった。施行内容は、テーピング施行が39件(48.8%)と最も多く、次いでストレッチ、アイシングの順であった。<BR>【今後の課題】利用件数はいずれの競技でも大会前半に多かった。これは大会前半に試合数が多いことや、後半戦に勝ち残る強豪校には帯同トレーナーが存在していたことが要因と考えられ、帯同トレーナーと連携が課題であった。またスポーツ現場では急性外傷への対応が求められることから、医師との連携体制や応急処置、テーピングに関する知識と技術の研鑽に努める必要があると思われた。今回のように県士会による支援活動はこれまでに前例がなく、長崎ゆめ総体における新たな試みであった。この活動を通して、痛みを持ちながらも競技に参加する選手の実状とスポーツ現場におけるニーズの高さを再認識できたことは有益であった。