著者
竹下 秀子
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.19-29, 2013 (Released:2013-07-31)
参考文献数
47

I first discuss the developmental and evolutionary implications of the temporal reorganization of individual development in human infants, which have resulted in unique human characteristics during early development and child rearing, for example, (1) the large size of neonates, (2) “trade-off” in mother-infant interaction, (3) self-contact behaviors, (4) various manipulations of objects, and (5) emergence of “childhood” and caregiving by multiple caregivers. I also discuss the results of our recent study on human and chimpanzee fetuses by using three-dimensional ultrasonography; this study showed that the growth velocity of the brain volumes of chimpanzee fetuses does not accelerate during late pregnancy, whereas that of human fetuses does accelerate through late pregnancy. Additional analysis and findings show that the timing of cessation in the increase of growth velocity of brain volume among species is crucial to clarify how much earlier infants are born and how retarded is the development of their postural reactions. Previously accumulated data suggest that further verification of temporally modified growth and development among species will help understand the effect of individual development on the evolution of human behavior.
著者
竹下 秀子
出版者
滋賀県立大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

ボノボ(Pan paniscus)を対象とし、複数物体による道具の構成が必要とされる場面で、当該の道具使用に関して、ヒトによるモデル行動がある場合を設定し、実験を実施した。チンパンジーのヤシの種子割りにみられるような、ユニットメソッドによる道具の構成が可能かどうかを、明らかにすることを目的とした。11頭の飼育ボノボを対象とした第1実験の結果、3頭のおとなのボノボは、1本の棒をかき寄せ棒として使用した。1頭のおとなオスは1本の棒をプラスチックケースに投げつけた。1頭のおとなメスと8歳と4歳のオスは棒ではなくウッドウールをプラスチックケースにむけて差し出し、引き戻した。おとなのうち2頭は、棒を使用して、多様な対象操作をおこなった。第1実験でもっともアクティヴで多様な行動を示したおとなの2頭を対象として、集中的なモデル行動の提示をおこなう第2実験を実施した。その結果、1頭は、幾度か2本の棒をつなぎ合わせることができたが、そのたびに、即座に分解してしまい、できあがった長い棒を道具として使うことはなかった。もう1頭も、一貫してアクティブであり、1本の棒でなんとかプラスチックケースをかき寄せようとした。利き手である右手は、4本の指の協調で精緻な操作が可能であり、左手は常に補助的に有効に使用されていた。両手使用の対象操作技能は非常に高いレベルにある。また、1本の棒使用ではより長い棒を選択していた。使用していた棒をケージの外に手放してしまうと、それを取り戻すために、短い棒を使用し、それも手放した場合には、ウッドウールを利用するというように、複数物体を、順次利用する行動も出現した。しかし、両対象個体とも、90試行を経ても、2本の棒を組み立てて、新たな長い棒を構成し、刺激の食物をかき寄せる行動は出現しなかった。
著者
藤本 麻里子 竹下 秀子
出版者
日本動物心理学会
雑誌
動物心理学研究 (ISSN:09168419)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.61-71, 2007-12-25
被引用文献数
1

本研究は,ニホンザル成体メス間のグルーミングが持続する要因を明らかにすることを目的とした。餌付け群である嵐山E群の成体メス10個体を対象に,個体追跡法により,グルーミングの開始から終了までを時系列に沿って観察した。その結果,グルーミングの開始から終了まで観察できた大半のエピソードで役割交代がなかった。一方,役割交代の回数が増えると持続時間が長くなる傾向があった。役割交代が何度も起こったエピソードでは,血縁個体間ではグルーマーがグルーミングをやめて,相手にお返しのグルーミングを催促して交代するやり方が二者間で連続して起こった。非血縁個体間では,グルーマーがグルーミングをやめる前に,グルーミーが自主的に相手にグルーミングしようとして交代するやり方が二者間で連続して起こった。ニホンザルは相手が血縁個体か非血縁個体かによって,役割交代時の行動を変化させていることが示唆された。