著者
竹村 一夫
出版者
社会学研究会
雑誌
ソシオロジ (ISSN:05841380)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.87-108,183, 1991-02-28 (Released:2017-02-15)

The purpose of this paper is to estimate the function of the cult of the jizo-son toward the community reconstruction. This paper is based on the results of sampling research in Osaka city, in 1988. Our basic hypotheses are as follows: 1 ) the religious properties of the cult of the jizo-son are weakened and 2 ) the cult of the jizo-son can be useful for community reconstruction. We took some steps to examine facts and documents, the taken-for-grantedness of the value domain called "Cultural Property". It was in 1897 that the definition "National Treasure", the highest category of Cultural Property, was newly introduced by the Old Shrines and Temples Preservation Act. And it was this act that served as the basis for the present Cultural Properties Protection Act enacted in 1950. After analyzing 1 ) how the conception of "fine art" was interpreted in Japan over a thirty year period, from the Meiji Restoration in 1868 until 1897, 2 ) why things with religious value became the objects of preservation, and 3 ) what kind of discussion was held in the Imperial Diet in approving the act, one conclusion seems clear. That is, that the value "National Treasure" was brought forth in order to meet two demands: the spiritual demand which was enhanced by the nationalistic trend of the time and the demand for the promotion of overseas trade to increase the national wealth. The birth of the National Treasure can be interpreted, from one side, as a symbolic example of the secularization of religion during the modernization process of Meiji Japan. But from the other side, it was a conversion of a religious symbol into a national symbol which was none the less sacred.
著者
竹村 一夫
出版者
樟蔭女子短期大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

喫煙行動に関する資料・文献の収集および整理,データベース化について,前年度から継続して行った。収集した資料・文献の書名や出版年などをデータベース化し,一部については目次もデータ化した。目次については,今後もデータ化の作業を進め,内容の要約についてもデータ化の予定である。また,雑誌・マンガ雑誌からの画像データベースについて,画像の説明がキーワード程度では有用でないため,より詳しいコメントを付け加えた。テレビドラマ等の映像に関しては,編集にかなりの時間を要したため,データベース化は当初の予定通りにはいかず,分析には至らなかった。この点は,今後の課題である。これらの作業と平行して,大学生に対する聞き取り調査を実施した。その結果,単純に判断することは出来ないが,例えば,喫煙に関して,男性の場合は,直接的には友人の影響や周囲の大人,特に父親・兄の影響が大きかったといった回答がえられた。女性の場合も男性とそれほど異なるわけではないが,友人の影響が男性よりもより強く,喫煙について自分の意志で選択したことを強調するケースは,男性よりも多く見受けられた。メディアの影響については,特に意識されているわけではないが,映画やテレビドラマ等でタバコが小道具として有効に使われていることについて,多くの学生が理解しており,男性性の強調や自立した強い女性のシンボルとして使われていること,マンガのストーリー中に出てくるタバコ・喫煙行動については,特定のイメージの男女を登場させるときには必ず出てくるなど,一定のパターン化された使われ方がされていることについて,指摘した学生もいた。このように,喫煙イメージの形成および伝達に関して,親子や友人などの人間関係が大きな影響力をもっているだけではなく,特にステレオタイプ化されたイメージについては,メディアが一定の役割を果たしていることが指摘できる。
著者
竹村 一夫
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学人間科学研究紀要 (ISSN:13471287)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.179-189, 2007-01-31

母子家庭を対象とした福祉施策は,「きめ細かな福祉サービスの展開」と「自立・就労の支援」を中心とした施策に転換された。その背景としては,高齢社会化にともなう社会保障費の増大と政策における思想的な背景としての新自由主義,市場主義の影響が指摘できる。母子家庭の経済的な現状としては,国民生活基礎調査では,2003年の母子家庭の1世帯当たりの平均所得は全世帯の平均所得の半分以下しかない。シングルマザーの就業率は非常に高いが,非正規雇用者の割合は一般就労者より高く,近年進行した雇用の多様化は,就労する条件としては不利になりがちなシングルマザーにより厳しい影響を与えている。岡山市のシングルマザーを対象とした聞き取り調査からえられた課題としては,資格があっても残業や夜勤のある仕事には就きにくいこと,パソコンの練習をしたくても購入しにくいこと,転職や就業条件のことなどで相談に行きたくても行きにくいこと,養育費の確保が困難な場合が一定程度含まれると考えられることなどをあげることができ,特に相談機能の弱さを補っていくことと,母子家庭への情報提供のあり方として,情報が単にそのまま提供されるのではなく,必要な情報をその意味するところも含めていかに的確に伝えられるかが課題となるだろう。