著者
尾方 真帆 平塚 京子 赤尾 智広 越智 繁樹 竹治 智 恩地 森一
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.466-471, 2016

<p>吸収不良症候群の診断は,脂肪吸収試験が必須である。今回,脂肪吸収試験(簡易便中脂肪定量法)が有用であった吸収不良症候群疑いの2症例を経験したので報告する。症例1は60歳代男性で,体重減少が生じていた。脂肪吸収試験の結果,脂肪吸収率0%(参考基準値:97–100%)で,吸収不良症候群と診断するために脂肪吸収試験が有用であった。治療としてリパクレオン<sup>®</sup>,タフマック<sup>®</sup>Eによる消化酵素補充療法が開始され,治療経過中に再度行った脂肪吸収試験の結果は脂肪吸収率63.9%と,治療前と比較すると大幅な改善が認められた。症例2は60歳代男性で,体重減少が生じていた。脂肪吸収試験の結果,脂肪吸収率97.8%で,吸収不良症候群を否定するために脂肪吸収試験が有用であった。脂肪吸収試験は脂肪負荷食の設定や試験中の間食の監視,蓄便の徹底,および採便前の混和など,手技を正確に行えば再現性は良好で,精度が高い検査であった。また簡易便中脂肪定量法を用いた脂肪吸収試験は界面活性剤と汎用自動分析装置を用いる簡便な検査であり,吸収不良症候群の鑑別のためのスクリーニング検査として,どの施設においても実施が可能であると思われる。さらに,簡易便中脂肪定量法を用いた脂肪吸収試験は吸収障害の程度を定量的に把握することが可能であるため,吸収不良症候群の診断や治療方針の決定,その効果判定に有用であった。</p>