著者
下田 裕太 伊藤 尚 笠井 久隆
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.173-175, 2000-12-25
被引用文献数
1

Z-Leu-Leu-Leu-H(Z-LLL-H)は, 神経成長因子(NGF)と同様に神経突起伸長を誘発する。Z-LLLを担体としたアフィニティークロマトグラフィーによって, ウシ大脳抽出液からS-100βと異なるZ-LLL-Hの標的タンパク質として, 新たに脳型クレアチンキナーゼを同定したのでここに報告する。ウシ大脳抽出液からDEAE-5PW HPLC(段階溶離, 直線濃度勾配法), 逆相HPLC, Z-LLL担体を用いたアフィニティークロマトグラフィー, SDS-PAGEを用いて標的タンパク質を分解した。カルシウムイオン依存的にZ-LLL担体に親和性を持つ43kDaタンパク質が得られた。このタンパク質のトリプシン消化ペプチドを逆相HPLCで分離した後, そのうち2つのペプチドのアミノ酸配列分析を行い, 脳型クレアチンキナーゼと同定した。本酵素の活性はZ-LLL-H処理によりほとんど消失した。
著者
安藤 剛 吉川 陽介 下田 裕太 伊藤 尚 笠井 久隆
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.118-121, 2000-09-25
被引用文献数
1

我々は, 既に神経突起伸長因子であるZ-Leu-Leu-Leu-H(Z-LLL-H)の標的タンパク質として, ウシ脳からZ-LLL構造を有するアフィニティー担体にカルシウム依存的に結合するS-100βを単離した。本論文では, アルデヒド基を有するZ-LLL-HとS-100βの反応性, 反応部位および反応様式について報告する。S-100βはZ-LLL-Hとカルシウム依存的に結合し, 修飾S-100βは, 逆相HPLCにより元のS-100βと異なる位置に溶出された。また反応混合溶液のTOF-MS分析により, 元のS-100βより分子量が大きい修飾S-100βが検出された。さらに修飾S-100βを還元固定後, 酵素などにより切断したペプチド断片のアミノ酸組成分析及びアミノ酸配列分析から, Z-LLL-HはS-100β分子中の8個のLys残基のうちLys-55のみと反応し, ε-アミノ基とアルデヒド基がシッフ塩基を形成する可能性が示された。
著者
柳澤 健 新田 收 笠井 久隆 猫田 泰敏 飯田 恭子 菊池 恵美子 長田 久雄 福士 政広 齋藤 秀敏 福田 賢一
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.276-281, 2000-03-25 (Released:2017-10-27)

東京都立保健科学大学生の国家試験合否予測などを目的として、東京都立医療技術短期大学生の入学・在学時成績と医療系国家試験合否との関係を(1)入学選抜方法と国家試験合否, (2)入学選抜方法(一般入試・推薦入試)と退学・除籍者数, (3)一般人試成績と国家試験合否, (4)学内成績と国家試験合否, (5)一般入試成績と学内成績, および, (6)国家試験の得点予測の6項目に分けて統計学的に分析した。対象は同短期大学に入学した1,132名で, 入学選抜方法, 一般入試成績, 学内成績, および国家試験の合否を指標に調査した。その結果, (1)入学選抜方法の相違による国家試験合格率に有意差はなかった。(2)一般人学に比べ推薦入学で退学・除籍者が多い傾向がみられた。(3)一般入試の成績は国家試験合格群と不合格群の間で有意差がなかった。(4)多くの学内主要科目の成績において国家試験合格群は不合格群に比べ高得点であった。(5)一般入試成績と学内成績との間に相関はなかった。(6)4学科のうち2学科で国家試験の得点予測式を試作した。
著者
栗田 孝 伊藤 尚 熊倉 鴻之助 笠井 久隆
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.133-140, 1999-09-25

著者らはマストパラン類中のマストパランT(MT)をモデルペプチドに選択し, N末端3残基をGly-Leu-Alaに置換した誘導体(GLA-MT), 及びその3残基を取り除いた誘導体(MT-GG-11), 5位, 8位のAlaをGlyに置換した誘導体(GLA-MT-AG, GLA-MT-GA及びGLA-MT-GG)を液相法により合成し, その生物活性を測定した。GLA-MTはウシ副腎髄質クロム親和性細胞からのカテコールアミンの放出作用においてMTの活性を2倍に増強し, 合成したマストパン誘導体の中では最も高い活性を有した。また, GLA-MT-GGはそれ自体に活性がないものの, クロム親和性細胞に対する高濃度の前処理によりマストパランによるカテコールアミン放出を増強した。さらに, 円二色性の測定によるα-helix含量, カルモデュリン及び赤血球膜への結合性, 赤血球溶血作用を検討した。マストパランは細胞情報伝達に関与するGTP-binding proteinsを活性化することから, 細胞情報伝達系異常に由来すると考えられる疾患の原因を解明するツールとして, 有用な高活性マストパラン誘導体を合成できる可能性が示唆された。
著者
臼井 正哉 物井 則幸 中田 英夫 伊藤 尚 熊倉 鴻之助 笠井 久隆
出版者
日本保健科学学会
雑誌
東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.185-188, 1999-09-25

マストパラン(MP)はクロム親和細胞に作用しカテコールアミン(CA)放出を引き起こすことが知られている。我々はすでに, MPのN末端領域がCA放出活性に大きく寄与していること, MPのN末端4残基フラグメント(INLK-NH_2;N-4)はそれ自身にはCA放出活性が認められないが, ニコチン性アセチルコリンレセプター(nAChR)に選択的に作用して抑制効果を示し, その作用部位はAChと異なることを示唆した。今回我々は, 13種N-4アナローグを新規に合成しAChによるCA放出抑制効果を比較し, 以下のような結果を得た。(1)1-2位あるいは4位アミノ酸のロイシンあるいはアルギニン置換により抑制効果が増強された。(2)最も抑制効果の強かったアナローグであるLLLK-NH_2はN-4の約6倍の抑制効果を示した。これら新規ペプチドはnAChRの関与する疾患への治療薬としての応用が期待される。