- 著者
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栗田 孝
伊藤 尚
熊倉 鴻之助
笠井 久隆
- 出版者
- 日本保健科学学会
- 雑誌
- 東京保健科学学会誌 (ISSN:13443844)
- 巻号頁・発行日
- vol.2, no.2, pp.133-140, 1999-09-25
著者らはマストパラン類中のマストパランT(MT)をモデルペプチドに選択し, N末端3残基をGly-Leu-Alaに置換した誘導体(GLA-MT), 及びその3残基を取り除いた誘導体(MT-GG-11), 5位, 8位のAlaをGlyに置換した誘導体(GLA-MT-AG, GLA-MT-GA及びGLA-MT-GG)を液相法により合成し, その生物活性を測定した。GLA-MTはウシ副腎髄質クロム親和性細胞からのカテコールアミンの放出作用においてMTの活性を2倍に増強し, 合成したマストパン誘導体の中では最も高い活性を有した。また, GLA-MT-GGはそれ自体に活性がないものの, クロム親和性細胞に対する高濃度の前処理によりマストパランによるカテコールアミン放出を増強した。さらに, 円二色性の測定によるα-helix含量, カルモデュリン及び赤血球膜への結合性, 赤血球溶血作用を検討した。マストパランは細胞情報伝達に関与するGTP-binding proteinsを活性化することから, 細胞情報伝達系異常に由来すると考えられる疾患の原因を解明するツールとして, 有用な高活性マストパラン誘導体を合成できる可能性が示唆された。