著者
笠原 順路
出版者
明星大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、自然神学詩や18世紀の詩およびロマン主義詩全般によく見られる「呼びかけ」(Vocative)について研究をした。詩においては通例、呼びかけの語(Vocative)は、呼びかける対象物を出現せしめる。ところが、ロマン派の詩においては、かならずしも対象物を出現せしめるだけではない。ロマン派を代表する(1)Wordsworth,"There was a Boy"、(2)Shelley,"Ode to the West Wind"、(3)Keats,"Ode on a Grecian Urn"、(4)Lord Byron,"The Colosseum episode" from the Canto IV of Childe Harold's Pilgrimageのなかに現れる(広義の)詩人の自画像と解される詩行を見ると、それらがそれぞれの詩人独自の詩論の特徴を反映しながらも、全体として、共通するロマン主義的特質を表していることがわかる。その特徴とは、呼びかけの語によって対象物が顕れると同時に、そこに呼びかける主体または詩人が理想とする自画像もまた顕れてくるということである。これは、18世紀詩からロマン主義の詩へ変化してゆく際の非常に重量な特徴である。ロマン派における自我意識の拡大を如実に反映しているからである。これが、4年間におよぶ自然神学詩をはじめとした18世紀詩からロマン主義の詩へ移行する家庭をたどった本研究の結論である。
著者
草光 俊雄 大石 和欣 笠原 順路 鈴木 雅之 鈴木 美津子 石幡 直樹 アルヴィ宮本 なほ子
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、イギリス帝国主義(パクス・ブリタニカ)の基盤が築かれた時代において、旅行記や見聞記、探検記を地域ごとに 7 名の研究者で手分けをしながら調査し、それぞれの地域の民族、風物、風俗の描写の背後で、イギリス人としての自意識がどのように働いているかを実証した。帝国の拡張はいわば膨張であり、海外探検は科学・文明の拡張であり、旅行記や探検記にはイギリスの覇権拡張という隠された意図と自負が潜むと同時に、異質の民族・文明との接触を通じて不安定に揺れ動いている意識が浮かび上がっている。「イギリス的なもの」(Britishness)についての意識が変容し、国民の帰属意識が再編され、多様化し、ぐらついていく実体を言説上において捕捉できた。研究遂行の課程では、海外研究者の招聘や国際シンポジウム、国際学会の開催・共催、さらに学会発表や論文のかたちで成果を問うことができた。