著者
石崎 涼子 鹿又 秀聡 笹田 敬太郎
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.214-222, 2022-08-01 (Released:2022-10-25)
参考文献数
11
被引用文献数
1

全国の市町村を対象に実施したアンケート調査等の結果に基づき,森林行政の担当職員の規模と専門性の現状を明らかにし,これらが森林行政に与えうる影響について検討した。近年,市町村森林行政の業務量は職員増を遥かに上回る規模で増加したと考えられ,現在,ほとんどの市町村が人員不足を感じている。職員数が多い市町村には森林行政に関わる専門性をもつ職員がいる団体が多く,相対的に幅広い種類の業務が実施され森林に行く頻度も高いが,職員数が少ない団体以上に多くの団体が人員不足を実感している。一方,人員不足を感じていない市町村の多くは,森林関係の業務量自体が少ない団体である。更新基準となる広葉樹の識別や崩壊危険地の判別には専門的な職員がいる市町村であっても知識等の不足を感じているケースが多く,職員数が非常に少ない団体には崩壊危険地の判別等について業務を通じて意識する機会がないとする団体が一定数存在する。以上から,職員数や専門性といった人員体制は,森林行政として担う業務の範囲や,現地確認やリスク判定等をどこまで行うかといった業務のレベルに影響を与えている可能性が示唆された。
著者
笹田 敬太郎 佐藤 宣子
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.1-9, 2013-11

近年大規模災害が発生する中で,過疎・高齢化が進む山村において,いかに地域の安全を守るかが課題となっている。消防団は山村の地域防災の中核に位置付けられ,団員は職業を持ちながら,平時の訓練,有事の際の消火,災害復旧,住民の避難誘導などを担っている。本研究では山村における消防団の実態と課題を明らかにするため,九州山村の3地域を対象に行政資料の収集と団員へのアンケートを実施し,職業別に活動参加実態を考察した。その結果,団員の不足や高齢化の下で,役場職員やOB団員に活動の依存度が高まる傾向を把握した。農林業従事者の団員の比率は35%以下であるが,土建業従事者と共に災害時の出動回数が多かった。地域別にみると,近隣都市への通勤圏にある球磨村では職種や勤務地が多様化し,加入率が他よりも低かった。奥地山村である諸塚村では,出動の中心が役場勤務の団員へと移行し,自治公民館単位に消防団OBからなる消防支援隊が組織されていた。そして広域合併市の五家荘地域では,土建業,林業に従事する団員を中心に住民一体となって活動を実施しているが,行方不明者の捜索への出動が増加し,消防団員の負担が大きいなどの特徴が明らかとなった。