- 著者
-
広嶋 卓也
中島 徹
鹿又 秀聡
堀田 紀文
- 出版者
- 日本森林学会
- 雑誌
- 日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
- 巻号頁・発行日
- vol.103, no.6, pp.409-415, 2021-12-01 (Released:2022-04-08)
- 参考文献数
- 19
再生可能エネルギー固定価格買取(FIT)制度において,間伐材や林地残材からなる未利用木材による木質バイオマス発電に対して,調達価格が高値に設定されたことを受け,未利用木材の利用量は年々増加している。そして未利用木材の中で,間伐由来の原材料割合は約4割を占めることから,間伐材生産量の増減が未利用木材に与える影響は無視できない。以上を踏まえ,本研究では,既往モデルを利用して,FIT制度の電源調達期間である20年間にわたる,都道府県別・間伐材生産量のシミュレーションを行った。シミュレーションでは,47都道府県を,間伐量に応じて3グループに分類しグループごとに,モデルの主要パラメータである,間伐面積,間伐材搬出率について,2012年(実績値)から2032年にかけての変化の傾向を3通り作成した。一つは,2012年以降の時系列変化の傾向を延長した「すう勢シナリオ」で他は,パラメータの変化の増減傾向に仮定をおいた「間伐減退シナリオ」および「間伐増進シナリオ」である。これら三つのシナリオに従い,都道府県別の間伐材生産量がどのように変化するか調べた。各都道府県に共通して見られた傾向として,間伐材生産量は,間伐増進シナリオ>すう勢>間伐減退の順に大きく,2012年から2032年にかけて間伐増進シナリオは増加,すう勢は減少,間伐減退は大きく減少する結果となった。都道府県別に見ると,北海道,静岡,大分,鹿児島の4道県は,間伐材生産量が大きく,かつ今後さらに生産量を増やす余地があるという点で,今後の未利用木材の需要増に応える上で,重要度が高いと考えられた。