- 著者
-
篠崎 美生子
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.1, pp.38-47, 2005-01-10
「鼻」は、王の「内面」(=人間の弱点)を書き/読む小説である。物語内容の上では、王権と弱い「内面」は両立を許されないのだが、読書行為の中では、内供は同情され、救済されてしまった。こうして王に感情移入する読書のレッスンのほか御製、教育勅語等の効力が相俟って、人々に王の「人間宣言」という矛盾を受け入れさせる要因になったのではないか。