著者
瀬尾 匡輝 瀬尾 悠希子 米本 和弘
出版者
言語文化教育研究学会
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.83-96, 2015-12-30 (Released:2016-03-21)

近年,各教育機関が日本語・日本語学習の魅力を高め「商品化」に努めたり,学習が商品として「消費」される傾向が強まっている。本稿では,日本語教育の商品化が顕著な香港の語学学校で働く池田さん(仮名)の意識を中心に,教師がどのように教育の商品化を経験しているのかを探った。非常勤講師である池田さんは,自分の雇用を守るために,学習者の満足度を重視し,商品化を試みる教育機関の方針に従わざるを得ず,目指したい教育実践・学習者が求めるもの・教育機関の方針の間で葛藤を抱いていた。そして,学習者の満足度を高めることが最優先され,学習者の表面的/一時的な興味・関心に偏った教育実践が生み出される構造が教育の商品化にはあることが浮き彫りとなった。今後は,商品化の利点と弊害について教師の視点も含めて議論を深め,どのように日本語教育の商品化と消費に対峙していくかを考えなければならない。
著者
米本 和弘 佐野 香織
出版者
国立大学留学生指導研究協議会
雑誌
留学生交流・指導研究 (ISSN:13434683)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.49-61, 2023 (Released:2023-07-06)

近年、高等教育の「内なる国際化」の観点から、国際共修の授業が盛んに行われ、観察された学生の学びや変容の様子をもとに、その効果と可能性が指摘されている。ただ、高等教育の国際 化に関しては、課題も指摘されており、授業の方法や技術面の課題のみではなく、国際化の意味と国際共修のあり方についても議論を深める必要がある。そこで本稿では、協働で実践を行った 教員2名の協働探究を通して、教員の国際共修に対するあり方について考察することを目的とした。教員2名に対するインタビューを通し収集したデータをもとに、国際共修で直面しうる境界 に関する課題とそれに対する教員の教育観を描き出すとともに、高等教育の国際化とは何を指すのかという視点から、教員の境界へのかかわり方を論じた。国際共修というアプローチが抱えうる課題を取り上げたが、教員2名の教育実践を通して、その課題教員が常に意識的であることの重要性と、その難しさが明らかになった。
著者
米本 和弘
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.178, pp.200-214, 2021-04-25 (Released:2023-04-26)
参考文献数
20

本稿では,東京の大学の大学院留学生対象初級日本語コースで行った,「自助力」向上を目指した防災学習活動を通して,留学生がどのような経験をし,何を得たのか,実践の記録,および留学生と実践者の振り返りをもとに報告する。具体的には,従来の防災学習における課題を乗り越えるために提示されたGLIモデル(光原,2018)を応用し,1)東日本大震災のドキュメンタリー映画視聴,2)日本の自然災害についての読解活動,3)防災館における体験学習,4)学内でのフィールドワーク,5)学外でのフィールドワーク,6)防災に関する情報の発信,という流れで実践を行った。本活動の効果として,1)自然災害の基本的かつ実用的な情報をリアルに伝えることができたこと,2)自然災害に関する日本語を効果的に学習する場を提供できたこと,3)自然災害を自分ごとと捉え,自分の身を守る必要性に対する意識に働きかけることができたことが挙げられる。
著者
瀬尾 匡輝 瀬尾 悠希子 米本 和弘
出版者
言語文化教育研究学会
雑誌
言語文化教育研究 (ISSN:21889600)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.83-96, 2015

近年,各教育機関が日本語・日本語学習の魅力を高め「商品化」に努めたり,学習が商品として「消費」される傾向が強まっている。本稿では,日本語教育の商品化が顕著な香港の語学学校で働く池田さん(仮名)の意識を中心に,教師がどのように教育の商品化を経験しているのかを探った。非常勤講師である池田さんは,自分の雇用を守るために,学習者の満足度を重視し,商品化を試みる教育機関の方針に従わざるを得ず,目指したい教育実践・学習者が求めるもの・教育機関の方針の間で葛藤を抱いていた。そして,学習者の満足度を高めることが最優先され,学習者の表面的/一時的な興味・関心に偏った教育実践が生み出される構造が教育の商品化にはあることが浮き彫りとなった。今後は,商品化の利点と弊害について教師の視点も含めて議論を深め,どのように日本語教育の商品化と消費に対峙していくかを考えなければならない。