著者
米満 弘一郎 白 鴻成 前野 良人 大西 光雄 西野 正人 木下 順弘 定光 大海
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.7, pp.440-444, 2008-07-15 (Released:2009-07-25)
参考文献数
11

発症第 3 病日に劇症肝不全を合併したが,保存的加療にて軽快した熱中症III度症候群を経験した。症例は39歳の男性。マラソン中に意識消失した。Japan coma scale(JCS)200,腋窩温40.9°C,ショック状態だった。前医入院後,意識・全身状態は改善したが,第 3 病日に肝酵素,CPKの著明な上昇及びDICを認め当院転院となった。第 4 病日に肝性昏睡II度,PT活性20%,HPT 20%,AKBR 0.69,AST 3,330 IU/l,ALT 5,880 IU/l,NH3 155μg/dlとなり劇症肝不全と診断し,血漿交換及び持続血液濾過透析を行った。肝障害は速やかに改善し第33病日,独歩転院となった。熱中症III度症候群に合併する重症肝障害は,ショック,DICを契機に第 3 病日前後に顕在化すると考えられる。適時的な血液浄化などで保存的に軽快する例が多いが,早期より肝障害を想定した慎重な輸液管理,集中管理が重要である。