著者
粟野 誠一
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.13, no.155, pp.2-19, 1937-09

近來ヂーゼル機關用燃料の發火性に關する研究の進歩と共に、その發火性が發動機性能に及ぼす影響が論ぜられるに至つたが、發火時期或は燃料の燃燒割合等がサイクルの熱力學的性質に如何なる影響を及ぼすかに就いては未だ理論的に充分明にされてゐない。本文は、燃燒ガスのエントロピ線圖を利用した逐次的近似圖式解法を案出することによつて發火時期、燃燒割合を考へた場合の筒内壓力及び平均ガス温度の上昇の模様、平均有效壓力、熱效率等を算出し、これらがサイクルに及ぼす影響に就いて理論的考察を試みたものである。この圖式的方法は燃燒割合が豫め與へられるなればガソリン機關の筒内壓力の推定にも適用出來る。又熱損失を伴ふ場合の諸計算にも用ひることが出來る。これらの理論的に求めた指壓線圖の傾向は、實驗によつて求めたものと極めて類似し、又出力效率等に關する理論的結果は各種の實際的現象によく一致しこれらに理論的根據を與へ得る。