著者
森田 真史 糸満 盛憲
出版者
北里大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.αーTCPとDCPDの配合比と練和液の粉液比と圧縮強度および硬化時間ここで用いた燐酸カルシウムセメントは三菱マテリアル(株)によって開発されたαーTCP・DCPD系水硬性セメントである.DCPD10%,粉液比P/L=2.6で効果時間6分,最大圧縮強度は練和後,3日目で57.0MPaに達し,その後徐々に強度は低下することが平野らによって明らかにされている.2.練和セメントの粘度人工関節の固定または骨欠損部への充填材として本骨セメントを用いる場合,セメントの操作性のうち特に練和時における粘性と硬化時間が重要である.そこで,DCPD10%セメント粉末に対する粉液比を1,2,3の割合で練和し,硬化前の粘度を測定した.粉液比2程度が最も操作性がよいことが分かった.3.TCP顆粒混入によるセメント強度の改善効果ハイドロオキシアパタイト粉末((1)粒度1.0ー0.5mm,(2)粒度0.5ー0.3mm,(3)粒度0.3ー0.15mm,1200℃焼結)をセメント粉に5,10,20%それぞれ混入し,同セメント粉末をポリエチレングルコ-ス(PEG)30%を含む水2gに対して3.2gの割合で練和し,直径6mm,深さ12mmの圧縮強度測定試験片を作成した.強度はいずれもアパタイト不含のセメントの強度の50%以下であり,強度の改善は観られなかった.その原因として,アパタイト粉末とαーTCPの界面接着性に乏しいことが強度改善に結び付かなかった原因と思われた.4.家兎によるセメントの生体適合性評価大腿骨遠位端から2cm骨腿空を掻爬し,セメントを注入し,親和性を経時的に観察した.長期経過は現在観察中であるが短期の組織像では特に拒絶反応は認められない.
著者
酒井 利奈 糸満 盛憲 根武谷 吾 馬渕 清資
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.210-218, 2005-11-01
参考文献数
18
被引用文献数
4 2

セメントレス人工股関節の初期固定においては,広範囲・低応力接触が重要と考えられている.一方,工学分野においては,力学的安定状態は三点固定に代表される接触部の制限が望ましいと考えられている.これは相反する理念であり,人工関節の強固な固定を実現するためには,ステム上の適切な部位に制限した接触を目指すべきである.広範囲接触を求めた場合,固定部位が流動的に動く危険性があるからである.本研究においては,対象として固定法の概念が特徴的である既存の3種類の人工股関節PerFix SV^[○!R](JMM, JPN), IMC^[○!R](JMM, JPN), VerSys^[○!R](Zimmer, USA)を用い応力解析と応力測定を行い固定法の評価を行った.生物学的な固定に到達する以前の初期段階においては,近位部に流動的でない応力分布を有することが望ましい.従来一般に信じられている低応力という基準は改めるべきである.
著者
于 慶巍 森田 真史 糸満 盛憲
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.345-354, 1992-06-30

整形外科用インプラント金属の生体内における強度劣化を評価する一手段として繰り返し荷重下で腐食試験を行った。主な結果は以下の通りである。(1)SUS316Lとチタン合金の表面には孔食が,コバルト合金は全面腐食が観察された。孔食を起こした金属は不動態膜再形成が遅れる傾向があった。(2)SUS316Lは低溶存酸素下腐食環境で不動態膜の破壊電位が低下した。(3)チタン合金は腐食環境の影響はほとんど観られず,高い耐食性を示した。
著者
木村 正統 横山 一彦 中村 國衛 糸満 盛憲
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.24-29, 1996-02-29
被引用文献数
1

骨格筋における虚血再灌流後のO^-_2発生量の変化を観察する目的で,家兎温虚血後再灌流モデルを用いて,O^-_2発生量を測定し検討した。15羽の家兎後肢を各5羽ずつ2時間,4時間,6時間の血流遮断後,再灌流を行い,経時的に局所静脈血中のO^-_2発生量を測定した。血流遮断を行わない5羽をコントロール群とした。Superoxide Index(SI:再灌流後値/再灌流前値)をO^-_2発生量の指標とした。各虚血群とも,SI値は再灌流後5分にて有意に高値を示し,再灌流後のすべてのSI値は再灌流前より有意に高値を示したが,その後の経時的変化には有意な差は見られなかった。各虚血群間の比較では,経過時間別,各個体の最大SI値(MSI),全SI値の平均(ASI)のいずれの比較においても,各虚血群はコントロール群より有意に高値を示し,4時間は2時間より高値で,6時間は2時間と4時間より高値であった。虚血再灌流後O^-_2は初期より増加し,虚血時間が長くなるほど多くのO^-_2が発生することが観察された。