著者
細谷 純子
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.77-82, 1956
被引用文献数
1 8

チヤドクガEuproctis pseudoconspersaの飼育中に観察された, 2, 3の興味ある性質について報ずる.1)本種は自然界では年2回の発生であるが, 恒温下(22〜25℃)では越冬に入らせしめず, 世代を繰返させる事が出来た.2)卵は直径0.6〜0.7mm.卵期間は20〜22日であつた.3)幼虫は6〜7(時に8, 9, 10)齢を経過し, 幼虫期間は平均46.0日であつた.4)前蛹期間は約2日, 蛹期間は18〜23日であつた.営繭, 羽化時期とも, 雄の方が2〜3日早かつた.5)成虫の寿命は5〜7日で, 交尾は羽化後約24時間以内, 産卵は早いもので2日目に行われた.産卵数は1卵塊120粒前後であつた.6)1齢幼虫にはそれ自身毒針毛を生じない.2齢では腹部第1, 2環節亜背線部に, 終齢の前齢には更に第8腹環節亜背線部に, 終齢では第1〜8腹環節の亜背線, 気門上線部に毒針毛叢生部が生じる.毒針毛長は, 0.03〜0.207mmで, 齢期が進むにつれ長さを増す傾向がみられた.7)終齢幼虫の毒針毛は, 繭の内側に環帯となつて附着して(特に雌で顕著), 成虫は羽化に際して尾端房毛に附着させて脱出する.8)幼虫には顕著な群集性がみられる.集団的に飼育された場合, その1群中の個体数にやゝ比例的に幼虫期間と脱皮回数が短縮された.この場合, 最終齢幼虫の頭幅は雌雄によつては差がみられたが, 1群中の個体数によつては影響を受けない様に思われた.