- 著者
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永沢 幸七
川端 さと子
- 出版者
- 東京家政学院大学
- 雑誌
- 東京家政学院大学紀要 (ISSN:02866277)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, pp.91-105, 1981-10-01
(1)実験1の縦,横の比に関しての美意識の順位は,理科専攻生については1:1.2, 1:1.3,1:1.4の順になり,音楽科専攻生については1:1.4, 1:1.5,の順になり,美術科専攻生については1:1.3, 1:1.1, 1:1.6の比になりZeisingの黄金分割の比には音楽科専攻生が比較的近似していることが示唆された。男女の比較については女子学生は男子学生に比較して黄金分割に近接の値が美的感情として選ばれている。材料(2)を用い高さを連続的に少し宛変化させ,被験者の感情を記述し,美的感情を抱いた縦,横の比を調べると1:1.43, 1:1.67, 1:2.2の順位となる。Zeisingは外国人であるため,もしかしたら日本人の黄金分割は1:1.45附近で比が日本人の美的感覚の中に浸透したとも考えられる。(2)女子大生89名のA-Tまでの図形に対する美意識順位を要約すると,正三角形のM図形,次は三角形のK図形,第3位は正四方形のA図形,第4位は矩形のD図形,第5位はB図形などで一番選択されない順位の図形は各組ともT形,S形のよぅな湾曲図形である。(3)EPPS検査の親愛の項目における美感の順位の比較においては上位群は下位群と比較して著しく差のみられたのは,R図形で縦の三角形の底辺に安定感を感じ,同じように人間関係に安定感を求めるようになる。下位群は逆立つ図形に対して比較的美意識を持っている。またG図形,H図形に対して,下位群が上位群よりも美的感覚を感じている。また同じように人間関係に安定感を求めるようになる。下位群は逆立ち図形に対して比較的美感を感じている。またG図形,H図形に対して下位群が上位群よりも美的感覚を感じている。(4)専攻別学生及男子女子の比較 M図形(図6参照)に対しては美術科・音楽科生の方が理科生よりも著しく美意識を感じる傾向がある。(図2参照)S,T図形に対しては音楽科生,美術科生より理科専攻生がより美意識を感じている。G図形に対しては同じように理科生の美意識が比較的上位である。男女の比較においては,美術科専攻学生を検討するとM,N図形に対しては女子が男子に比較して美意識を持っている。K図形に対しては男子が女子より美意識が高い。斜方向直線は,一般に不快感を与えるといわれているが,垂直線や水平直線に比較すると不安定性を感ぜられるからと推量される。しかし斜方向直線を含む図形(例えば平行四辺形や正三角形など)であっても正しい位置におかれている場合は,それほど不安定性を感じられない傾向がみられた。血液型A, B, AB, O組の血液型による相関関係はBとO,AとBの相関が高くAとABの相関はすこぶる低くみられる。実験Iにおける最も美しい矩形の幅と長さの割合はZeisingの黄金分割の法則と一致する傾向がみられる。全体の順位と矩形のみの順位がほとんど変わらないことから矩形は,その他の図形より,美感を生じることがわかる。これは矩形の対応する2辺の長さが等しく,内角がすべて等しいため,他の図形より均衡がとれているためではないかと考えられる。実験IIの結果から,他の図形について考えてみると,同様に対応する辺や角が等しいほど,美感を生ずることがわかる。つまり図形K, Lよりは図形P, Q,図形P, Qよりは図形M, N, Oのほうが美感を生じる。また同じ図形の中では,より安定を感じるものの方が美感を生じることがわかる。つまり図形Lよりは図形K,図形Pよりは図形Q,図形Oよりは図形N,図形Nよりは図形Mの方が美感を生じる。直角と丸い角,直線と丸い線の比較では,直角,直線で構成された図形の方が美感を生じることがわかる。つまり図形S,Tよりは,その他の図形の方が美感を生じる。以上のようなことから,一般に美感を生じる図形とは直角と直線で構成された均衡のとれている簡単な図形,つまり矩形ということになり,その中でも,幅と長さの割合が黄金分割の法則に一致することに近いということが考えられる。付記 昭和56年後期東京学芸大学における「教育心理学特講」の講義の際の実験であることを明記し,学生各位及本学々生に対しご協力を謝す。