著者
細野 達夫 浅井 雅美 西畑 秀次 臼木 一英
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.459-466, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
8

冬季積雪地域である富山県砺波市および新潟県上越市で秋播き移植栽培したタマネギ ‘ターザン’ の抽苔株率データを用い,抽苔株率推定モデルについて検討した.タマネギの花芽形成に関する温度反応を積算したVD値,または日々の温度反応と葉数との積を積算したVDLN値について,積算期間を変えて抽苔株率との近似曲線への非線形回帰における決定係数を調査した.VDについては,いずれもの場合も決定係数が低く抽苔株率を高精度に推定することはできなかった.一方,植物体の大きさを加味したVDLNの決定係数については,砺波と上越の全データを用いた場合,1月20日まで,または移植後80日間の積算で0.75以上,砺波のデータのみを用いた場合は2月20日以降または移植後120日以降までの積算で概ね0.95以上と高かった.よって,VDLNを用いるモデルの有効性が示唆された.実用的な指標として,砺波において移植後140日までのVDLN > 490が ‘ターザン’ の抽苔可能性の目安として示された.
著者
細野 達夫 細井 徳夫
出版者
養賢堂
雑誌
農業気象 (ISSN:00218588)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.207-216, 2002-12-10
被引用文献数
2

施設栽培において、栽培作物の吸水量を把握あるいは予測することは、適切な灌水量の決定や施設内の熱水分環境制御のために重要である。灌水についていえば、作物が繁茂した場合には地面からの蒸発の占める割合は相対的に小さくなるので、作物の吸水量を把握あるいは推定することが、灌水量の決定において重要となる。近年、施設園芸では、環境保全的でかつ効率的な栽培方法として、肥料および水を植物に必要な量のみ施用することが可能な、いわゆる養液土耕法が普及し始めており、植物に必要な水量を決定する適切な方法が求められている。また、繁茂した植物による多量の蒸散は、施設内の熱水分環境に大きく影響を及ぼすので、冷暖房や換気等の環境制御においても蒸散量の把握・予測が非常に重要である。一方、蒸散量は、施設内環境の影響を受ける。施設内作物の蒸散と環境要因との関係については、数多くの研究がある。また、蒸散量の大小は作物の品質にも影響を及ぼすので、作物の蒸散量を制御因子として環境調節をする技術についても研究がなされている。しかし、実用規模の施設で、野菜の栽培期間にわたって作物の吸水量を精密に測定した例は、国内外を問わず非常に少ない。養液栽培キュウリ(主に冬作)についての研究があるが、トマト等、その他の野菜では見あたらない。筆者らは、実用規模の施設(ガラス温室)で養液栽培によりトマトの長期多段取り栽培(長段栽培)を行う中で、継続的にトマトの吸水量を評価した。そのデータをもとに、本報では、生育期間内の総吸水量の内訳、1日あたりのトマトの吸水量(日吸水量)の経日変化、および日吸水量とトマトの生長および環境要素との関連について解析した結果を報告する。