著者
山川 雄士 坂東 悦郎 川村 泰一 谷澤 豊 徳永 正則 杉沢 徳彦 金本 秀行 絹笠 祐介 上坂 克彦 寺島 雅典
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.1-10, 2014-01-01 (Released:2014-01-21)
参考文献数
25
被引用文献数
3 3

目的:85歳を超える超高齢者に対する消化管癌治療法の選択にあたっては,根治性のみならず患者の耐術能や社会的背景などを考慮に入れた総合的な判断が必要となる.75歳から84歳までの高齢者(elderly people;以下,EPと略記)と85歳以上の超高齢者(very elderly people;以下,VEPと略記)の胃癌手術症例を比較検討し,VEP群に対する胃癌手術の安全性,死亡原因に関して検討した.方法:2002年10月から2011年10月に当院で行われた胃癌手術症例のうち,R0手術を施行された75歳以上557例を,EP群515例とVEP群42例に分類し,両群における周術期因子,生存転帰を後ろ向きに比較検討した.続いて,VEP群の術後の死亡原因を解析し,他病死の予測因子を抽出した.結果:術前BMI値,血清Alb値はVEP群において有意に低値であった.両群間で術前Stageと術後合併症には差を認めなかったものの,郭清範囲はVEP群において有意にガイドライン推奨郭清度未満の手術が多かった(P=0.012).Overall survivalはVEP群で有意に不良であった(P=0.034)が,disease-specific survivalにおいては両群間において差を認めなかった(P=0.304).VEP群では術前BMI 20未満,術前血清Alb値低値,独居,術後在院日数15日以上で有意に他病死症例が高率であった.結語:VEP群はEP群と同様に安全な手術が可能であった.VEP群の治療成績の向上には,術前の栄養管理と術後の在宅支援が重要である.
著者
赤本 伸太郎 石井 正之 間 浩之 富岡 寛行 奥本 龍夫 塩見 明生 絹笠 祐介 齊藤 修治 山口 茂樹
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.13-18, 2012 (Released:2012-07-25)
参考文献数
12

【目的】一時的回腸人工肛門に対して人工肛門閉鎖術を施行した患者における器械吻合と手縫い吻合との吻合方法により合併症発生率に違いがあるかを検討した.【対象と方法】2002年から2006年までに回腸人工肛門閉鎖が行われた129例を手縫い吻合(以下,手縫い群)57例,器械吻合(以下,器械群)72例に分け,手術時間,在院日数,創感染,イレウスに関して検討した.【結果】手術時間は両群に有意差を認めなかった(手縫い群:63.8±14.4分vs器械群:61.7±19.0分,p=0.225).器械群では有意に術後在院日数が減少した(手縫い群:10.0±6.1日vs器械群7.1±1.2日,p=0.00004).創感染は両群に有意差を認めなかった(p=1.000).イレウスは器械群で有意に減少した(手縫い群:14/57vs器械群:3/72,p=0.001).【結語】器械吻合によるストマ閉鎖術は術後イレウスを減少させると考えられた.
著者
絹笠 祐介
出版者
日本泌尿器内視鏡学会
雑誌
Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.11-15, 2012 (Released:2014-02-07)
参考文献数
9

直腸癌の手術において根治性と機能温存の両立をはかるためには,温存すべき自律神経と直腸周囲の膜構造の理解が必要不可欠である.手術で損傷しやすい神経は下腹神経および骨盤内臓神経,骨盤神経叢とその臓側枝である.神経温存のメルクマールとなる筋膜は下腹神経前筋膜およびDenonvilliers筋膜である.筆者らはこれらの筋膜を温存する術式を取り入れている.また,近年の肛門温存術式の進歩により,より詳細な肛門周囲,特に肛門直腸移行部の解剖の理解も,これらを扱う外科医にとって必要不可欠となった.
著者
木内 亮太 杉浦 禎一 岡村 行泰 水野 隆史 金本 秀行 前平 博充 絹笠 祐介 坂東 悦郎 寺島 雅典 上坂 克彦
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.34-41, 2014-01-01 (Released:2014-01-21)
参考文献数
21
被引用文献数
1 3

症例は75歳の男性で,検診の採血で肝機能異常を指摘され,前医で左肝管原発の肝門部胆管癌と診断されたため,当院紹介受診となった.造影CTでは,左肝管から左右肝管合流部にかけて造影効果を伴う壁肥厚と,左葉の肝内胆管の拡張を認めた.内視鏡的逆行性胆管造影では,左右肝管合流部に陰影欠損を認めた.肝門部胆管癌と術前診断し,肝左葉・尾状葉切除,肝外胆管切除再建術を施行した.切除標本では,左肝管から左右肝管合流部に発育する21 mm大の乳頭状腫瘍を認めた.組織学的には,一部扁平上皮癌成分を伴う腺癌成分と,紡錘形細胞の増殖および骨形成を認める肉腫成分が混在していた.免疫組織学的に,肉腫領域は上皮系マーカーであるAE1/AE3が陰性,間葉系マーカーであるvimentinが陽性であった.以上より,左肝管原発の真の癌肉腫と診断した.術後1年経過した現在,無再発生存中である.