著者
大津留 晶 緑川 早苗 坂井 晃 志村 浩己 鈴木 悟
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.593-599, 2015-03-10 (Released:2016-03-10)
参考文献数
13
被引用文献数
1

甲状腺は放射線に対して発がん感受性が高い臓器の1つと捉えられている.甲状腺がんの放射線発がんリスクは,被曝時年齢が若いほど高くなる.放射線は発がん因子の1つとしても,二次発がんという観点でも重要である.原爆被曝者の調査では,外部被曝による甲状腺がんリスク増加が示された.チェルノブイリ原発事故は,放射性ヨウ素の内部被曝が発がんの原因となった.いずれも100 mSv(ミリシーベルト)以上から徐々に有意となり,線量が高いほど罹患率が上昇する,線量依存性が見られている.東京電力福島第一原発事故後,小児甲状腺がんに対する不安が増大し,福島では大規模なスクリーニング調査が開始されている.本稿では,放射線と甲状腺がんについて,これまでの疫学調査と病理報告を概説し,放射線誘発甲状腺がんの分子機構の最前線に触れ,最後に小児甲状腺がんスクリーニングについての考え方についてまとめた.
著者
緑川 早苗 大津留 晶
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

昨年度に引き続き、すでに倫理審査並びにデータ利用の許可が得られているものについて、さらに次の1)から3)について解析を進めた。1)出前授業のレスポンスカードにおける理解度満足度のその要因について、2)小児の甲状腺がんの自然史とスクリーニングのメリットデメリットについて 3)若年者におけるスクリーニングの同意取得におけるメンタルヘルスに関する問題点について。現時点で次のことが明らかになった。1)対象者である小中学生は出前授業に積極的に参加し、甲状腺スクリーニングについてよく理解するが、理解度と満足度は必ずしも一致せず、理解に伴いより不安や深刻さが増す場合がある。2)スクリーニングで発見された小児あるいは若年者の甲状腺がんはその多くが初期に増大後に増殖停止に陥いるが、そのにもかかわらず多くが手術を受ける。3)甲状腺検査の受診率は非常に高いが、受診率は必ずしも対象者の意思を反映しておらず、保護者の不安や検査の場の設定方法などを反映していると考えられる。以上の結果を以下の学会、論文にて発表した。1)学会発表 日本内分泌学会シンポジウム(2017年4月)、アメリカ甲状腺学会(2017年10月)、2)論文発表 Comparative Analysis of the Growth Pattern of Thyroid Cancer in Young Patients Screened by Ultrasonography in Japan After a Nuclear Accident The Fukushima Health Management Survey (JAMA Otolaryngology Head and Neck Surgery 2018(144),57-63)、3)については論文投稿準備中
著者
大津留 晶 緑川 早苗 坂井 晃 志村 浩己 鈴木 悟
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.593-599, 2015
被引用文献数
1

甲状腺は放射線に対して発がん感受性が高い臓器の1つと捉えられている.甲状腺がんの放射線発がんリスクは,被曝時年齢が若いほど高くなる.放射線は発がん因子の1つとしても,二次発がんという観点でも重要である.原爆被曝者の調査では,外部被曝による甲状腺がんリスク増加が示された.チェルノブイリ原発事故は,放射性ヨウ素の内部被曝が発がんの原因となった.いずれも100 mSv(ミリシーベルト)以上から徐々に有意となり,線量が高いほど罹患率が上昇する,線量依存性が見られている.東京電力福島第一原発事故後,小児甲状腺がんに対する不安が増大し,福島では大規模なスクリーニング調査が開始されている.本稿では,放射線と甲状腺がんについて,これまでの疫学調査と病理報告を概説し,放射線誘発甲状腺がんの分子機構の最前線に触れ,最後に小児甲状腺がんスクリーニングについての考え方についてまとめた.