- 著者
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志村 浩己
- 出版者
- 日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
- 雑誌
- 日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.2, pp.82-86, 2018 (Released:2018-08-24)
- 参考文献数
- 14
東日本大震災の半年後より,福島県において小児・若年者に対する甲状腺超音波検診が開始されたのに伴い,他の地域においても甲状腺に対する関心が高まっており,甲状腺超音波検査が行われる機会が増加していると考えられる。また,近年の画像診断技術の進歩に伴い,他疾患のスクリーニングや診断を目的とした頸動脈超音波検査,胸部CT,PET検査などでも甲状腺病変が指摘されることも増加している。成人において甲状腺超音波検査を実施することにより,0.5%前後に甲状腺癌が発見されうることが報告されている。これらのうち,微小癌に相当する甲状腺癌には生涯にわたり健康に影響を及ぼさない低リスク癌も多く含まれていると考えられている。従って,甲状腺検診の実施に当たっては,高頻度に発見される結節性病変の精査基準あるいは細胞診実施基準をあらかじめ定めてから行うべきであろう。甲状腺微小癌の超音波所見としては,比較的悪性所見が乏しいものから,悪性所見が揃っている一見して悪性結節と考えられるものまで多様性に富む。日本乳腺甲状腺超音波医学会では,結節の超音波所見に基づく甲状腺結節性病変の取り扱い基準を提唱しており,日本甲状腺学会の診療ガイドラインにおいてもこれが踏襲されている。この基準により,比較的低リスクの微小癌は細胞診が行われないことになり,比較的高リスクの微小癌のみが甲状腺癌として臨床的検討の俎上に載ることになる。本稿においては,微小癌の診断方針について現状の基準について議論したい。