著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1 ± 3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test(TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,Falls Efficacy Scale(FES),MOS Short-Form-36-Item Health Survey(SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale(NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。
著者
緒方 美湖 森 いつか 松岡 達司 河崎 靖範 槌田 義美
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ea0368, 2012

【はじめに、目的】 回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)の役割は、ADL能力向上による寝たきり防止と家庭復帰である。先行研究では、退院後の環境変化によって患者のADLが低下しやすいとの報告があるが、回復期病棟のセラピストが患者の退院後の生活に関わる機会は少ない。そこで、在宅患者のADLの確認・指導と、患者の在宅復帰後の生活を把握する為のセラピスト教育を目的に、H21年度から退院後訪問指導を導入した。今回、在宅復帰した患者の環境調整状況と満足度、活動範囲、セラピストの意識調査を行い、入院から在宅までの在宅復帰支援システム構築の一助となったので報告する。【方法】 (1)H21年4月~H23年5月までに退院後訪問指導を実施した脳血管障害患者57名(年齢69±14歳、男性30名、女性27名)を対象に、家屋改修や福祉用具導入などの環境調整状況の確認と満足度、Life-Space-Assessment(LSA)を調査し、χ2検定を用いた。(2)退院後訪問指導を実施した当院セラピストPT・OT・STの50名(経験年数6.8±4.3年)を対象に、セラピストの訓練内容の変化、訪問時に指導した内容、感じたこと等に関するアンケート調査を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究はデータ抽出後、集計分析した後は個人情報を除去し、施設内の倫理委員会の審査を経て承認を得た。【結果】 環境調整調査:環境調整場所としては玄関、寝室、トイレ、浴室、屋外の順で多く、満足している患者が77%、不必要だと感じた患者が10%、要改善と感じた患者が12%であり、有意な差を認めた(P <0.01)。不必要な調整内容として、ベッドのL字バーは使用していない、玄関のベストポジションバーは使用せず勝手口から出入りしている等があった。要改善内容として、シャワー浴時の手すりが必要、2階への昇降の為の手すりが必要、夜間移動時に廊下の電気が必要等があった。LSA:活動範囲として、町外への外出が37%、町内までの外出が53%、隣近所までの外出が10%、自宅周辺や自宅内活動は0%であり、有意な差を認めた(P <0.01)。外出先として、通所系サービス+通院が46%、通所系サービス+それ以外の外出が35%、通院のみが7%であった。セラピストアンケート:家屋改修後の環境を意識した訓練を行うようになった、家族から詳細に患者の生活背景や家屋の情報収集をするようになった、リハビリテーション(リハ)効果の確認や患者への動作再指導が行えた、家族指導の重要性を感じた等の意見が得られた。【考察】 環境調整に関しては、80%弱の患者が満足していると感じており、適切な環境調整が施されていることが明らかになった。しかし、20%強の患者では不必要、または改善が必要と感じており、環境調整施行における課題が残った。課題解決の為には、患者の在宅復帰後の身体能力やADL能力の予後予測、在宅復帰後の活動範囲や活動内容の把握、発症前の生活様式の理解など在宅生活を十分に予測し、環境調整に活かす必要がある。活動範囲に関しては、町内外への外出がほとんどを占めており、外出先として通所系サービスが多い事から、退院後の社会参加への取り組みとして通所系サービスへの介入が施されている事が分かった。しかし、疾患管理を中心とした通所系サービスの外出だけでなく、在宅生活の経過と共に、本人の望む外出や活動につながるアプローチが必要である。退院後訪問指導では、患者の在宅生活における環境調整の満足度や社会参加を知る手がかりになると考えられる。これらの調査結果から、個々の患者の在宅生活を見据えたアプローチの必要性が明らかになった。アンケート結果からも、退院後訪問指導を通して、セラピスト自身がそれらを認識し、アプローチの視点が在宅へも向くようなった。退院はリハのゴールではなく、在宅生活へのスタートである。退院後訪問指導は、環境調整後の動作確認や指導、相談、アドバイスなど在宅生活のフォローの機会となる。またセラピストが患者の生活期を見る機会でもあり、セラピストが予測、計画した退院後の生活を実際に確認し、在宅で生じた問題の修正の場となる。この経験の繰り返しが、リハや家族指導の再考の機会となり、在宅を見据えたリハの提供につながると考えた。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は、回復期病棟に勤務するセラピストにとって退院後訪問指導が、在宅生活フォローや、在宅生活を見据えたアプローチを行う上で、その糸口となる事を示唆するものと考える。
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1±3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test (TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,FallsEfficacy Scale (FES), MOS Short-Form-36-Item Health Survey (SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale (NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。