著者
松尾 洋
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集 第51回日本生態学会大会 釧路大会
巻号頁・発行日
pp.829, 2004 (Released:2004-07-30)

樹木の種子生産数の年変動は、その種子を産卵場所とする昆虫の個体群動態に多大な影響を及ぼす。特に、ほとんど種子生産がなかった年は致命的である。昆虫の休眠遅延(1年以上の休眠)はそのような予測不可能な変動環境に適応した現象として、様々な分類群で知られている。エゴノキの種子に産卵する年1化のエゴヒゲナガゾウムシもまた終齢幼虫の段階で休眠遅延を示す種である。これまでの研究から、1)室内・野外環境において同じコホート内で休眠年数に1〜4年の変異が存在し、2)2年目に羽化した個体は1年目に羽化した個体よりも大きいことがわかっている。大きな個体ほど休眠遅延する傾向は他の昆虫でも報告されているが、体サイズと相関のある他の要因が重要である可能性も残されている。本研究では、体サイズだけでなく、産卵時期および幼虫期の食物の質・量が休眠遅延率(休眠延長個体の割合)に与える影響を調べた。7月28日、8月1日、10日、20日の4回、果実のついた枝に網をかけ、雌10〜21個体に個別に産卵させた。終齢幼虫の生重および幼虫が発育した種子の体積を測定し、室内環境下で飼育し、羽化させた。また、幼虫の体サイズに影響をおよぼす、種子の体積・生重・乾重を繁殖期間を通して測定した。その結果、次の事が明らかになった。1)羽化個体と休眠延長個体が同じ母親から生じた。2)繁殖期後期に産卵された幼虫は前期に比べて終齢幼虫サイズが増加し、休眠延長率も増加した。また、3)繁殖期間中、種子の体積はほとんど変わらなかったが、種子の乾重は3倍以上に増加した。これらの結果から、エゴヒゲナガゾウムシでは、繁殖期後期に、十分成熟した種子に産卵された個体ほど休眠遅延する傾向があることがわかった。「寝る子は育つ」ではなく「育った子はよく寝る」である根拠を示すとともに、なぜ大きな個体が休眠遅延するのかを考察する。
著者
藤幡 士郎 坂本 宣弘 松尾 洋一 佐藤 幹則 木村 昌弘 竹山 廣光
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.76, no.3, pp.617-621, 2015 (Released:2015-10-01)
参考文献数
8

患者は24歳,女性.食後の悪心を主訴に近医を受診し,腹部CT検査にて左傍結腸溝付近に45×24mm大の嚢胞性腫瘍を指摘され,当院消化器外科を紹介された.腹部は平坦・軟であり腫瘤は触知されず,圧痛も認めなかった.紹介後に当院施行の腹部造影CTにて60×20mm大の嚢胞性病変が指摘され,MRI T2強調画像では50×32mm大の高信号域が前述の部位に指摘された.内部に結節等の充実性病変は認められなかったが,徐々に増大する良性嚢胞性疾患の診断の下予防的切除に同意され手術を施行した.腹腔鏡下に手術を施行,下行結腸外側の後腹膜に境界明瞭な嚢胞性の腫瘤を確認し被膜を損傷することなく摘出した.嚢胞内容物は粘液様で細胞診は陰性であったが,生化学検査ではCEA・CA125が高値であった.病理組織学検査の結果,粘液嚢胞腺腫の診断を得た.術後9カ月の現在,再発の兆候を認めていない.
著者
豊田 優 高田 龍平 松尾 洋孝 市田 公美 Blanka Stiburkova 鈴木 洋史
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-5, 2021 (Released:2021-06-04)
参考文献数
25

ATP-binding cassette transporter G2(ABCG2)は,尿酸排泄臓器において体外へ尿酸を排泄する生理的に重要な尿酸輸送体であり,痛風・高尿酸血症の主要病因遺伝子である.最近我々は,日本人のみならず,世界的に見ても高尿酸血症・痛風の発症率が高いチェコ人症例にも着目し,ABCG2変異と尿酸関連疾患との関連を検討することで,その病態生理学的重要性を明らかにしてきた.また,in vitro機能解析を通じて,ABCG2の機能低下/欠損をもたらす変異を新たに20種類以上同定することにも成功している.ABCG2が重要な薬物動態規定因子のひとつでもあることを踏まえると,本研究を通じて得られた成果は,ファーマコゲノミクスの観点からも有益であるといえる.本稿では,個別化医療や予防医学への応用が期待されているこれら一連の研究成果について,最新の知見を交えて紹介したい.
著者
松尾 洋介 大渡 遼介 草野 リエ 齋藤 義紀 田中 隆
出版者
天然有機化合物討論会実行委員会
雑誌
天然有機化合物討論会講演要旨集 57 (ISSN:24331856)
巻号頁・発行日
pp.PosterP33, 2015 (Released:2018-10-01)

【序論】紅茶は世界中で広く飲まれる飲料であり、ポリフェノールを豊富に含むことからさまざまな健康維持効果が知られている。紅茶は生茶葉を揉捻して製造されるが、その過程でカテキン類が酵素酸化を受けてテアフラビン類やテアシネンシン類などのさまざまな紅茶特有のカテキン二量体が生成する1)。テアフラビン類 (1–4) はベンゾトロポロン環を持つ赤橙色の紅茶色素であり、カテコール型カテキンとピロガロール型カテキンの酸化的縮合によって生成する2)。テアフラビン類は紅茶製造過程においてさらに酸化されることが知られている3)。我々はこれまでにepicatechin (5) 共存下におけるポリフェノール酸化酵素でのtheaflavin (1) 酸化生成物について検討を行い、theanaphthoquinone (6) やflavanotheaflavin A (8) などが生成することを報告した4)。しかし、ガロイル基を持つテアフラビン類であるtheaflavin-3-O-gallate (2), theaflavin-3′-O-gallate (3), およびtheaflavin-3,3′-di-O-gallate (4) の酵素酸化反応について、これまで十分な検討は行われていない。さらに、1は中性条件下において自動酸化され、ポリフェノール酸化酵素とは異なる酸化生成物bistheaflavin B (16) が生成することが分かっているが5)、ガロイルテアフラビン類2–4の自動酸化生成物は明らかとなっていない。紅茶ポリフェノールとして構造が解明されているのは全体の数パーセントにすぎず、実際の製造過程では非常に複雑な酸化生成物が生じており、その大部分の構造については解明されていない1,6)。これら未解明の紅茶ポリフェノール生成にテアフラビン類のポリフェノール酸化酵素や自動酸化による酸化が寄与していると考えられることから、本研究では5共存下におけるガロイルテアフラビン類2–4の酵素酸化機構および、中性条件下における自動酸化機構について検討した。【テアフラビン類のポリフェノール酸化酵素による酸化機構】Epicatechin (5) 共存下において3位にガロイル基を持つtheaflavin-3-O-gallate (2) をポリフェノール酸化酵素で処理した結果、theanaphthoquinone-3′-O-gallate (7), flavanotheaflavin B (9), およびtheadibenzotropolone A (10)7) が得られた。化合物7はベンゾトロポロン環が酸化を受けてナフトキノン環へと変化したものであり、9はベンゾトロポロン環と5が酸化的に縮合したものである。一方、10は2のガロイル基と5が縮合して新たなベンゾトロポロン環を形成した生成物であった。同様の条件で3′位にガロイル基を持つtheaflavin-3′-O-gallate (3) を酸化したところ、ガロイル基と5が縮合したtheadibenzotropolone F (12) が生成し、ベンゾトロポロン環が酸化を受けたものは得られなかった。 3位および3′位にガロイル基を持つtheaflavin-3,3′-di-O-gallate (4) の場合も3と同様に、ガロイル基と5が縮合したtheadibenzotropolones D (13), E (11), およびtheatribenzotropolone A (14)8) が得られ、ベンゾトロポロン環が酸化を受けたものは得られなかった。さらに、テアフラビン類1–4単独あるいは5共存下における酵素酸化反応について経時的変化を調べたところ、テアフラビン類単独ではポリフェノール酸化酵素によって(View PDFfor the rest of the abstract.)
著者
槻本 康人 木股 正樹 夜久 均 田中 大 曽田 祥正 松本 恵以子 柴田 奈緒美 松尾 洋史 並河 孝 藤原 克次 岡野 高久
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Da1000, 2012

【はじめに、目的】 開心術後リハビリテーションは、二次的な廃用症候群や術後肺炎などの合併症予防に有用のみならず、早期離床を可能とし早期退院に有用である。当院でも二次的合併症の予防や術後運動耐容能を改善する目的で、クリティカルパスに沿って理学療法士が術後早期から介入を行っている。術後リハビリテーションでは、日本循環器病学会の開心術後クリティカルパスを用いている施設も多い。開心術の対象疾患である心臓弁膜症と虚血性心疾患は、術前の病態や重症度は異なる。しかし、同一の開心術後クリティカルパスで術後リハビリテーションを行った結果、体力の低下に不安を抱えて退院する患者も散見される。今回開心術後リハビリテーションに関連する術前の因子について、心臓弁膜症と虚血性心疾患の間で検討した。【方法】 対象は、平成21年4月から平成23年10月までの間に当院で待機的に開心術を行った76例のうち、急性心筋梗塞および複合手術を除く心臓弁膜症患者(20例)および虚血性心疾患患者(25例)である。入院時の性別、年齢、身長、体重、BMIおよび移動能力を調査した。移動能力の指標として、アメリカ胸部学会のガイドラインに従って術前6分間歩行テストを行った。また予備調査として、性別、年齢、身長および体重をもとに6分間歩行距離の予測値を算出した。統計処理はWilcoxon順位和検定を行い、5パーセント未満を有意水準とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は、対象者へ研究の趣旨と内容、調査結果の取り扱いについて説明し、同意を得た上で調査を実施した。【結果】 性別は心臓弁膜症が男性10名、女性10名、虚血性心疾患は男性17名、女性8名であった。年齢は心臓弁膜症74.8±9.2歳、虚血性心疾患69.3歳±8.7歳と心臓弁膜症が有意に高かった。身長は心臓弁膜症156.8±10.7cm、虚血性心疾患162.3±9.5cmと有意差はなかった。体重は心臓弁膜症55.2±9.8kg、虚血性心疾患64.2±8.9kgと虚血性心疾患が有意に高かった。BMIは心臓弁膜症22.3±4.4、虚血性心疾患24.3±2.4と虚血性心疾患が有意に高かった。また6分間歩行距離は心臓弁膜症302.1±92.0m、虚血性心疾患は379.2±83.8mと虚血性心疾患が有意に高かった。予測6分間歩行距離は心臓弁膜症503.8±41.9m、虚血性心疾患は491.2±45.9mと有意差はなかった。【考察】 今回の予備調査では、予測6分間歩行距離に心臓弁膜症と虚血性心疾患の間で有意差はなかったが、実際の6分間歩行距離では心臓弁膜症に有意な低下が見られた。近年リウマチ熱等による若年者の大動脈弁狭窄症は減少し、高齢者の動脈硬化性大動脈弁狭窄症が増加傾向にある。加齢による移動能力の低下が、心臓弁膜症患者の6分間歩行距離低下に影響したと推察された。また、心臓弁膜症患者は、左室拡張末期圧の上昇等で労作時の胸部症状が出現し、日常生活活動の低下や活動量が減少している症例が見られる。これら日常生活の不活発化が、6分間歩行距離の低下に影響を与える可能性が示唆された。虚血性心疾患患者は心臓弁膜症患者と比較してBMIが高く肥満傾向であったが、若年者が多く加齢による移動能力の低下が少なかった事、亜硝酸薬の内服で運動制限が少なく良好な日常生活を過ごしていた事などが影響し、6分間歩行距離が有意に高かったと推察された。よって、術後リハビリテーションでは、心臓弁膜症患者は活動量の増加や移動能力の向上を目的に、歩行トレーニングを中心とした低負荷長時間の運動療法が重要であると思われる。また虚血性心疾患患者は肥満傾向にあったので、冠危険因子を是正し再イベントの発生を回避するため、減量指導や継続して有酸素運動を中心とした心臓リハビリテーションが重要であると思われる。【理学療法学研究としての意義】 心臓弁膜症患者と虚血性心疾患患者の間で術前調査を行った。心臓弁膜症患者は、胸部症状の出現や加齢により移動能力が低下、虚血性心疾患患者は肥満傾向にある事が示唆された。本研究より、開心術後リハビリテーションでは、同一のクリティカルパスであっても両疾患の特性に応じたリハビリテーションが提供されるべきであると思われる。
著者
松尾 洋介
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.137, no.3, pp.347-354, 2017-03-01 (Released:2017-03-01)
参考文献数
32
被引用文献数
1

In recent years, plant polyphenols have attracted great attention due to their wide range of biological activities. Certain kinds of polyphenols have complex structures; therefore, it is difficult to elucidate their total structure, including stereochemistry. In this study, we reinvestigated the stereostructures of two major C-glycosidic ellagitannins contained in Quercus plants, vescalagin and castalagin, and revised their stereostructures based on theoretical calculations of spectroscopic data. We also determined the structures of quercusnins A and B, isolated from the sapwood of Quercus crispula, based on theoretical calculations of NMR data. The oxidation mechanism of polyphenols has not been entirely elucidated. Therefore, we have also studied the oxidation mechanism of tea catechins during black tea production. Our investigation of the oxidation mechanism of black tea pigment theaflavins revealed that the difference in the position of the galloyl ester affords different oxidation products of theaflavins. In addition, oxidation products of pyrogallol-type catechins could be classified into three types—dehydrotheasinensins, theacitrins, and proepitheaflagallins; their detailed production and degradation mechanisms were also examined.
著者
松尾 洋介
出版者
長崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

茶葉の焙煎処理による茶葉ポリフェノール成分の化学変化の詳細を解明することを目的として、実際の茶葉の焙煎処理を模倣した、試験管内におけるモデル実験を行った。茶の主要アミノ酸のテアニンと、茶カテキンのエピガロカテキンガレートの混合物を加熱した結果、テアニンとエピガロカテキンガレートが縮合した6種の化合物が得られた。これらの生成物のうち、2種はp-キノン型構造を持つ赤色色素であった。本色素は茶葉の焙煎による色調の変化に大きく寄与していると考えられる。続いて、茶葉に含まれる遊離糖の一つであるグルコースとエピガロカテキンガレートの混合物を加熱処理したところ、エピガロカテキンガレートのA環6位または8位にグルコースが結合したものなどが生成した。さらに、EGCg、テアニン、グルコースの三種類を混合して加熱したところ、二種類を混合した場合とは生成物が大きく異なることが分かった。三種混合の場合、まずテアニンとグルコースとの間でアミノ・カルボニル反応が起こり1-エチル-5-ヒドロキシ-2-ピロリジノンが生成後、EGCgのA環8位(及び6位)と縮合して生成したと考えられた。
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
18

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1 ± 3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test(TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,Falls Efficacy Scale(FES),MOS Short-Form-36-Item Health Survey(SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale(NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。
著者
市田 公美 細谷 龍男 細山田 真 松尾 洋孝 中村 真希子
出版者
東京薬科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

URAT1/SLC22A12とGLUT9/SLC2Aは近位尿細管における尿酸再吸収に働くトランスポーターで、この欠損は腎性低尿酸血症を引き起こす。URAT1/SLC22A12とGLUT9/SLC2A9の変異で、尿酸輸送能に影響を与えないと報告されていた変異を検討し、アフリカツメガエルの卵母細胞を用いた輸送実験の条件を変更することにより、変異による尿酸取り込みの減少を示し、腎性低尿酸血症を惹起する可能性を明らかにした。ABCG2は尿酸の分泌に働くトランスポーターであり、この機能低下や欠損を認める一塩基多型により高尿酸血症を来たしやすくなる。血清尿酸値における、ABCG2の機能の重要性を示した。
著者
中原 明生 松尾 洋介
出版者
物性研究刊行会
雑誌
物性研究 (ISSN:07272997)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.73-74, 2011-04-05

この論文は国立情報学研究所の電子図書館事業により電子化されました。
著者
河津 弘二 槌田 義美 本田 ゆかり 大田 幸治 緒方 美湖 吉川 桂代 山下 理恵 山鹿 眞紀夫 古閑 博明 松尾 洋
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.23-29, 2008-02-20

本研究は,地域における一般高齢者向けの,介護予防を目的とした運動プログラム「長寿きくちゃん体操」の紹介をするとともに,地域主体での教室運営による運動プログラム介入前後の身体機能面と精神活動面で変化がみられたことを報告する。教室の対象は,老人クラブの21名(74.1±3.7歳)で,期間は3ヶ月問であり,教室は他機関の健康運動指導士が運営した。身体機能面の変化に対し,教室の前後で,10m全力歩行,開眼片脚立ち,握力,長座位体前屈,Timed Up & GO Test (TUGT),6分間歩行を評価した。また,日常生活活動や精神活動の変化に対し,アンケート調査で,主観的健康観,FallsEfficacy Scale (FES), MOS Short-Form-36-Item Health Survey (SF-36),グループインタビューを実施し,また痛みの変化ではNumeric Rating Scale (NRS)を実施した。結果は,身体機能面で,10m全力歩行,TUGT,6分間歩行,握力で有意な改善を認めた。また,精神活動面は,主観的健康観で有意な変化を認め,他項目でも改善傾向があった。地域リハビリテーションでの介護予防教室に対し,ポピュレーションアプローチでの間接的な運動プログラムの提供により,心身の変化の可能性を示唆したと考えられた。