- 著者
-
織田 由美子
- 出版者
- 日本商業学会
- 雑誌
- 流通研究 (ISSN:13459015)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.1, pp.21-34, 2020 (Released:2020-06-30)
- 参考文献数
- 57
本稿では,結婚や育児,介護等プライベート領域の市場化において,伝統的な役割規範が維持されるプロセスを,Butler(1990)のパフォーマティビティの概念に基づいて明らかにすることを試みる。より具体的には,「婚活」ブームを通して配偶者探しの市場化が普及する一方で,男性の経済力を重視するといった伝統的な役割規範が維持されるプロセスを明らかにする。これまでの研究は,市場調達における利用者の矛盾やストレスを解決する方法や,市場をアイデンティティ構築の場として活用するといった観点であり,消費者のエージェンシーを前提とした研究であった。本稿では,新たな実践の採用(再意味化)と伝統的規範の引用という両面から,変化のプロセスを検討する。分析結果からは,実践を促進する言説が,伝統的規範に矛盾しないという言説と同時に展開されることで,市場化が促進されつつ伝統的規範が維持されたという可能性が示された。