著者
織田 禎二 宮本 忠臣 白石 義定 朴 昌禧
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.861-864, 1991-04-15 (Released:2009-04-28)
参考文献数
6

小児の開心術では通常,輸血が不可欠であるが,ときに親の宗教上の事情により輸血が拒否されることがある,われわれは“エホバの証人”のシンパを親にもつ1.4歳の小児の開心術で同様の経験をした.無輸血での心臓手術を希望する親を説得して,母親の血液に限り輸血の許可を得たため,Lilleheiらの“controlled cross circulation”(交差循環)をこの母子間で行い,心室中隔欠損孔パッチ閉鎖,僧帽弁再建術に成功した.この交差循環は母親の総大腿動脈よりroller pumpで脱血して患児の上行大動脈へ送血し,患児の上下大静脈より落差脱血にてreservoirに導いた血液を別のroller pumpで母親の大腿静脈へ送血して行った.交差循環時間は212分であった.術後は母子とも発熱を認めたほかはきわめて順調に経過し,術後2.2年経過した現在もきわめて経過順調である.
著者
清水 弘治 伊藤 恵 金築 一摩 今井 健介 末廣 章一 織田 禎二
出版者
南江堂
雑誌
胸部外科 (ISSN:00215252)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.252-256, 2016-04-01

著者らが手術を行ったStanford A型急性大動脈解離90例を対象に、これらを術式により上行置換群74例と弓部置換群16例に分け、治療成績を比較検討した。その結果、1)手術時間、体外循環時間、心筋虚血時間、循環停止時間、SCP時間は弓部置換群で有意に長く、再開胸率も弓部置換群で高かった。2)遠隔期の累積生存率を比較すると、5年生存率は上行置換群68±6%、弓部置換群59±14%で、有意差はみられなかった。一方、術後5年の大動脈合併症回避率は上行置換群88±6%、弓部置換群68±16%でこちらも有意差はみられなかった。3)遠隔期大動脈合併症は上行置換群では9例に認められた。また、死亡例の2例以外に弓部大動脈拡大での再手術が3例、腹部大動脈拡大による手術が1例、仮性瘤形成による再手術が3例あった。殊に弓部置換群では3例で認め、死亡例1例以外の2例で下行大動脈拡大で手術が行われていた。尚、術後の末梢側拡大は両群間で有意差は認められなかった。
著者
織田 禎二 宮本 忠臣 白石 義定 朴 昌禧
出版者
The Japanese Society for Cardiovascular Surgery
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.861-864, 1991

小児の開心術では通常,輸血が不可欠であるが,ときに親の宗教上の事情により輸血が拒否されることがある,われわれは"エホバの証人"のシンパを親にもつ1.4歳の小児の開心術で同様の経験をした.無輸血での心臓手術を希望する親を説得して,母親の血液に限り輸血の許可を得たため,Lilleheiらの"controlled cross circulation"(交差循環)をこの母子間で行い,心室中隔欠損孔パッチ閉鎖,僧帽弁再建術に成功した.この交差循環は母親の総大腿動脈よりroller pumpで脱血して患児の上行大動脈へ送血し,患児の上下大静脈より落差脱血にてreservoirに導いた血液を別のroller pumpで母親の大腿静脈へ送血して行った.交差循環時間は212分であった.術後は母子とも発熱を認めたほかはきわめて順調に経過し,術後2.2年経過した現在もきわめて経過順調である.