- 著者
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羽貝 正美
- 出版者
- 東京都立大学都市研究センター
- 雑誌
- 総合都市研究 (ISSN:03863506)
- 巻号頁・発行日
- no.58, pp.73-96, 1996
本稿は近代都市計画の先駆として19世紀以降の世界の諸都市に様々な影響を及ぼしたパリ都市改造に素材を求め、その歴史的意義を再考することを課題とする。はじめに、近年のフランスの都市研究の特質を検討し、その中に、パリ改造研究の新しい視点を探ってみたい。その上で、パリ改造推進の最も重要な法的手段であった公用収用権限、超過収用、地帯収用制度に焦点を合わせ、その導入の背景を考察する。具体的には、1840年代の都市状況とこれらの実施をめぐる議論を検討し、こうした制度が導入されるに至った多様な要因を整理したのち、1852年3月26日のパリの街路に関するデクレの意義を検討する。最後にこのデクレの斬新性と限界とに注目し、近代都市計画の先駆としてのパリ改造の歴史的意味、その二面性を再考する。