著者
伊香賀 俊治 江口 里佳 村上 周三 岩前 篤 星 旦二 水石 仁 川久保 俊 奥村 公美
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.76, no.666, pp.735-740, 2011-08-30 (Released:2012-01-13)
参考文献数
23
被引用文献数
35 23 7

It takes many years to recover the initial investment cost for installing housing insulation through savings from energy reduction (Energy Benefit: EB), since construction cost is very high in Japan. This long payback time is the major barrier to the promotion of well-insulated houses. However, it has been found that if Non-Energy Benefits (NEB) of well insulated houses, such as improvement in personal health, reduction of medical expenses and decline in absences from work are all taken into account, the time required to recover the initial investment cost would change from 29 to 16 years. Therefore recognition of NEB is expected to encourage residents to invest in residential thermal insulation. NEB of well-insulated houses is thus evaluated regarding human health in this study.
著者
星 旦二 伊香賀 俊治 海塩 渉 藤野 善久 安藤 真太朗 吉村 健清
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.297-306, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
33

目的 本研究の目的は,我が国の冬期における戸建て住宅各室の室温と外気温の実態と共にその関連性について,国土交通省の定める省エネ地域区分別に明確にすることである。方法 本研究の対象者は,日本全国に居住している3,781人である。調査は2014年度冬季より,国土交通省の支援を得て全国的に実施されている,SWH(Smart Wellness Housing)事業の一環として5年間実施した。 各部屋別(居間・寝室・脱衣所)に測定された冬期二週間の床上1 m室温と床近傍室温,それに気象庁が測定した外気温の実態とともに,その関連について共分散構造分析を用いて解析した。これらの関連は,同時分析により全国の省エネ地域区分別に解析した。分析ソフトは,SPSS22.0とAMOS22.0を用いた。結果 冬季における住居内床近傍室温は床上1 m室温よりも低く,時間帯でみると床近傍ないし室温共に朝が低い温度を示した。部屋別室温較差は,居間と脱衣所間で大きかった。 室温を地域別にみると,省エネ地域2の室温が最も高く,省エネ地域4の室温が最も低いことが示された。冬期の外気温は各室温よりも床近傍室温と強い関連がみられた。結論 我が国の住宅床近傍室温は,床上1 m室温よりも低いことと,居間と脱衣所とでは大きな温度較差がみられた。省エネ地域区分4の住宅床近傍室温と床上1 m室温が最も低いことが示された。室温が外気温から影響される度合いは,省エネ地域7を除き地域番号とともに大きくなることが示された。
著者
川久保 俊 伊香賀 俊治 村上 周三 星 旦二 安藤 真太朗
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.79, no.700, pp.555-561, 2014-06-30 (Released:2014-07-15)
参考文献数
32
被引用文献数
9 11

Previous studies have revealed relationships between specific residential environmental factors and residents' health status. However, no previous study has considered the comprehensive health risk due to overall residential environment. Therefore, a large-scale nationwide questionnaire survey was conducted using CASBEE Health Checklist to examine the residential environment of detached houses and residents' health status. Results show that overall residential environment was likely an important determinant of health and was associated with disease prevalence among residents.
著者
大木 幸子 星 旦二
出版者
日本NPO学会
雑誌
ノンプロフィット・レビュー (ISSN:13464116)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1+2, pp.25-35, 2006 (Released:2006-12-19)
参考文献数
25

本研究は都市での住民による健康な地域づくり活動を取り上げ,活動を担っている住民のエンパワメントの過程及びコミュニティの生成過程を抽出することを目的とした.その上で健康な地域づくり活動による公共性形成の可能性を考察した.調査協力者は2つのグループのボランティ14人であり,半構造化面接によりデータを収集し,修正版グラウンデッド・セオリーにより分析した.その結果,担い手のエンパワメント過程では〈地域の風景の存在〉,〈内なる対話〉,〈他者との対話〉,〈地域とつながる自己像の獲得〉のカテゴリーが得られた.他方,コミュニティの生成過程として〈他者との対話〉,〈地域のまなざしの醸成〉,〈地域のアクチュアリティの深化〉,〈地域の解決力の形成〉が抽出された.これらの2つの過程は〈他者との対話〉を結節として循環していた.またこのようなエンパワメントされた地域づくり活動は,縁側機能,対話,協働,交流を基軸にして小さな公共性を形成する活動として位置付けられる可能性が示唆された.
著者
林 侑江 伊香賀 俊治 安藤 真太朗 星 旦二
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.83, no.745, pp.225-233, 2018 (Released:2018-03-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1 3

The Japanese population is ageing, and currently has the world's highest proportion of elderly people. As one consequence, the number of residents in nursing homes is increasing. The Ministry of Health, Labour and Welfare of Japan has identified preventing a need for care as an important aim. The ministry defines “care prevention” in two parts: preventing a care-requiring condition from arising and, when a care-requiring condition already exists, aiming to improve while preventing deterioration. However, mean care level in nursing homes is still increasing, and existing care-prevention strategies are not enough to prevent future increase. A field survey was conducted to clarify the effect of indoor thermal environment on the care-requiring condition of residents in nursing homes. Twenty private residential-nursing homes, located in the Osaka, Kyoto, Nara and Hyogo prefectures of Japan, were included in this study. Room temperature and relative humidity were measured over approximately 4 weeks in private rooms, the dining room and other rooms of each facility at 20-min intervals in winter 2015. Additionally, questionnaire surveys were conducted twice, in winter 2015 and winter 2016. In the questionnaire, care level and date of certification of care needs was investigated for all care certifications in effect after occupancy until the time of the survey. Most facilities had a relatively warm but dry indoor environment. Fifteen facilities were classified into two groups (warm and cold) based on measured room temperature and two groups (moist and dry) based on measured relative humidity. The Kaplan-Meier method was used to analyse the speed of deterioration (i.e., intensification) of required care level. Residents in the dry facility deteriorated with respect to care level more quickly than residents in the moist facility. In contrast, there was no significant difference according to room temperature. Many factors influence care requirements, including not only the indoor thermal environment but also individual attributes, injury and diseases. To assess these influences, multivariate analysis was carried out. Cox proportional hazards regression analysis was used for multivariate analysis to assess the effect of indoor thermal environment on the care-requiring condition of residents in nursing homes. Two questions were evaluated: “Did the care level deteriorate?” and “If so, how long did it take for care level to deteriorate?” The analysis result showed the cold group and the dry group having a higher risk of deterioration of care level. Furthermore, residents in facilities that were both warm and moist had the lowest risk. This result suggests that both temperature and humidity are important for care prevention. The study results are expected to contribute to improvement in indoor thermal environments and to care-prevention among residents of nursing homes.
著者
谷口 力夫 星 旦二 藤原 佳典 高林 幸司
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.5-18, 1998

都道府県別にみた平均寿命の30年間の経年変化の実態を分析し、特に東京都平均寿命の特性を明らかにすることを目的とし、1965年から1995年までの5年毎30年間の男女別都道府県別平均寿命を分析対象として調査を実施した。都道府県別平均寿命の経年変化をみると、男女共に急速に延びていった。しかしながら性別にみた増加傾向は同一ではなかった。女性の平均寿命は、1985年頃まで直線的に延長していったが、1990年以降はその延びが鈍化し上に凸な二次曲線の延びとなっていった。男性の増加傾向は、女性よりも5年早く二次曲線の延びに変化していた。都道府県別平均寿命の地域間格差を経年的にみると、1965年では男性で最大4.52歳、女性では同様に3.46歳であったものが、30年後の1995年では、男性で3.67歳、女性では3.25歳へと縮小していった。1965年の時点で、最も短い平均寿命は、男性では青森県の65.32歳、秋田県の65.39歳で、女性では秋田県の71.24歳、岩手県の71.58歳であった。一方、最も長い平均寿命の地域は、男性で東京都の69.84歳、京都府の69.18歳、女性では東京都の74.70歳、神奈川県の74.08歳であった。1965年の時点において、東京都の男女の平均寿命は突出して高い値を示していたが、年次経過とともにその延びは鈍る傾向を示し、30年後の1995年における順位は大きく変化していった。30年後の1995年の東京都平均寿命の男性順位は20位で、女性平均寿命の順位は35位となり、他の道府県の平均寿命の延びに比べて、延び率が少ないことが明らかになった。
著者
伊香賀 俊治 満倉 靖恵 小熊 祐子 福永 興壱 星 旦二 伊藤 史子 苅尾 七臣 星出 聡 藤野 善久 久保 達彦 中村 裕之 福島 富士子 鈴木 昌 渡辺 麻衣子 白石 靖幸 安藤 真太朗 川久保 俊 山川 義徳
出版者
慶應義塾大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2017-05-31

超高齢化の進行に伴う医療費・介護費等の増大は、先進各国共通の課題であり、疾病・介護予防へと政策が転換され始めている。個人の努力による生活習慣改善に限界が指摘される中で、本研究では住環境(住宅や地域)の改善によるCo-Benefit である健康寿命延伸効果に着目し、大規模なフィールド調査と追跡・介入調査によって住環境と脳情報や要介護状態等、新たな客観データによる健康影響の客観的論拠の獲得を進めている。本年度は、さまざまな世代を対象として自宅と自宅以外の環境が居住者の健康に及ぼす影響の調査を目的とした横断面調査の補充ならびに、研究代表者らの科研費基盤A(23246102、26249083)から実施してきた経年調査(縦断面調査)、住環境・執務環境の建替・改修前後調査(介入調査)を実施した。具体的には、青壮年期~中年期を対象とした調査では、自宅環境と居住者の健康(客観指標:家庭血圧、脳MRI撮像データ、睡眠状態、体温、身体活動量、心拍、IgE抗体等)との関連の検証に加え、オフィスでの知的生産性の検証を行った。日中の知的生産性はオフィス環境そのものの影響のほか、前日の自宅での睡眠・休息が影響するため、良質な自宅・オフィスの環境がもたらす相乗効果に関する被験者実験を行った。また、自宅と自宅以外の環境の相乗効果は幼・少年期にも存在するため、幼稚園・小中学校での活発な身体活動と自宅での良好な睡眠が、病欠確率と学習効率への影響を調査・分析した。環境側の調査項目としては温度・湿度、(一部の調査で光・音・空気環境、カビ・ダニ)測定等を行った。今年度の調査対象地は、高知県(梼原町、高知市)、山口県(長門市)、福岡県(北九州市)、東京都(23区内)、神奈川県(横浜市、藤沢市)、山梨県(上野原市、大月市)、広島県(広島市)、三重県(津市、伊勢市)、熊本県(熊本市)、石川県(志賀町)等であった。
著者
児玉 小百合 栗盛 須雅子 星 旦二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.199-209, 2018 (Released:2018-05-29)
参考文献数
28

目的 高齢期の主観的ウェルビーイングに関連する幸福感の,簡便な評価と生存との関連は十分に検討されていない。相互扶助の地域特性を有する沖縄県農村地域在住の自立高齢者を対象に,4段階の選択肢による簡便な幸福感の評価が,3年後の生存の予測妥当性の高い因子になり得るかどうかについて,多様な要因を調整変数として検討した。方法 2012年度に沖縄県の農村地域で実施したアンケート調査の回答者から,要支援・要介護認定者および幸福感に回答が得られなかった者を除き,3年後の追跡が可能であった1,471人(男性638人,女性833人)を対象とした。幸福感等の主観的指標は4件法で順序尺度化した。料理10種類の週当たりの摂取頻度は5件法で順序尺度化し,主成分分析の第1主成分を加工食品以外の料理の多い「食の多様性」とした。幸福感の3年間の生存日数に対する総合的分析は,調整変数の欠損値を除いた734人を対象に,Cox比例ハザード分析を行った。性・年齢および3年後の生存と有意な関連(P<0.05)を示した対象者の基本的属性(収入のある仕事・入院経験・喫煙習慣のないこと・運動頻度・BMI区分)および高齢期の健康に関連する変数(幸福感,主観的健康感,自立度,体重変化,外出控えのないこと,連続歩行,転倒骨折がないこと,地域活動,友人や近所付合,外出頻度,加齢役割,病気は自分で防げる,地域信頼,食の多様性)を調整変数とした。幸福感と累積生存率との関連は,カプラン・マイヤー法による生存分析を実施した。結果 3年後の生存者は1,387人(94.3%)であった。幸福感の「とても幸福である」と回答した者のうち3年後の生存者は95.9%であり,「幸福でない」の生存者86.4%と比べて有意に割合が高かった。一方で,「幸福でない」と回答した者のうち死亡者は13.6%であり,「とても幸福である」の死亡者4.1%と比べて有意に割合が高かった。多変数調整モデルにおいて,3年後の総死亡のハザード比(HR)を有意に低下させていたのは,幸福感(HR=0.56,95%CI:0.32-0.99),転倒・骨折がないこと(HR=0.26,95%CI:0.11-0.62),喫煙習慣がないこと(HR=0.44,95%CI:0.25-0.77)であった。累積生存率は,幸福感が望ましいほど有意に高かった。結論 4段階の選択肢による幸福感の評価は,沖縄県農村地域在住の自立高齢者において,3年後の生存の予測妥当性の高い因子になり得る可能性が示唆された。
著者
藤原 佳典 柴田 博 原田 謙 新開 省二 吉田 裕人 星 旦二
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.39-48, 2003

先進三カ国の主要都市、東京とニューヨーク、パリの健康水準の実態を都心部、周辺部、全体に分けて検討した。同一主要都市内では中心部で平均寿命が短く、AIDS・結核発症者の割合が多かった。高齢期の総死亡率や主要な疾患別死亡率については主要都市内での格差よりも主要都市聞での年齢階級別の相違のほうが顕著であった。とりわけマンハッタン地区は年齢階級の上昇とともにパリ中心部地区及び東京都23特別区に比べて相対的に死亡率の低下を認めた。乳児死亡率・新生児死亡率については主要都市間及び同一主要都市内でもニューヨーク全体つまり、マンハッタン地区の外側が高かった。次に、高齢期の総死亡率と乳児死亡率について三主要都市ごとに中心部地区の分布及び相関を見た。各死亡率に対するマンハッタン20区のばらつきが目立った。また、65才以上総死亡率と乳児死亡率の相関関係についてはパリ中心部地区のみ両者に有意な負の相関がみられた。三主要都市間あるいは内部の健康水準の格差をもたらす規定要因を明確にするには、今後、三主要都市における衛生行政に関する指標、人口学的指標及び社会・経済学的指標を含めて国際比較の視点から学際的・総合的に相関関係を検討する必要性が示唆された。We reported healthy standard of the three international megalopolises, Tokyo, New York, and Paris, in advanced countries, comparing with central area and around it respectively. Central areas had shorter life expectancy, and had more incidence of AIDS and tuberculosis in every three city. In terms of age-specific total death rate in older persons and main diseases, there was more remarkable difference among inter-cities than among inner-cities. Whole New York City, around Manhattan area showed highest infant mortality rate (IMR) and neonatal mortality rate in every area in the three cities. Total death rate for older persons showed significantly inverse correlation with IMR only in 20 central wards in Paris.
著者
三徳 和子 高橋 俊彦 星 旦二
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-10, 2006

主観的健康感の関連研究から,主観的健康感は死亡率に対し独立した寄与因子であることが指摘されている.そうであるなら死亡率に与える効果の大きさには,死因や性別,年齢および観察期間によって差異はあるのかという疑問が生じる.この問題は主観的健康感の意義を解釈をしたり保健活動への応用を議論する上で重要と思われる.本研究の目的は,主観的健康感と生命予後との関連性について,これまでの研究成果を整理し,今後の研究の方向と課題を提示することである. 主要な結果は以下のとおりである. (1)主観的健康感の低い者のその後の生存妥当性が低いことは,大多数の研究で確認されたが,そのメカニズムに関する詳細な研究報告は見あたらなかった. (2)主観的健康感と死亡との関連性の強さは,男女間で差がないとする報告と男性により強い関連性がみられたとするとする報告とがあった. (3)年齢は多くの研究で潜在的交絡因子として調整され,死亡率との関連性を年齢別に観察した研究は少なかった.いくつかの報告では関連性は高齢者のみではなく中年や若年者年齢層にもみられること,85歳以上では関連が弱いことが示されている. (4)主観的健康感の良否と死因とに関する追跡研究は,主観的健康感の低い者は高い者に比べて心血管疾患やがんによる死亡危険度が有意に高いことを明らかにしている.また最近では,死亡率に与える効果には,死因によって強弱の差があることも示されている. 以上の結果から,主観的健康感はその後の生存とその予測等に関連していることが明らかとなったが,主観的健康感が生命予後に対する予測効果をなぜ持つのかを明らかにすることが今後の課題である.