著者
羽賀 祥二
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、20世紀前期(明治末縲恟コ和戦前期)の地域社会の歴史像を構築した郷土史家の歴史学的方法論と歴史叙述に表れた歴史的構想力について考察を行い、彼らが地域社会のアイデンティティーの創出、地域の歴史的起源や文化的多様性の発見、地域の再生にどのような役割を果たしたのかを解明することである。本研究では、次の調査・研究を実施した。(1)愛知県の郷土史家である津田応助の関係史料(象山文庫)が所蔵されている小牧市図書館の調査を行い、彼が編纂した郡町誌関係の史料、津田日記などの所在を確認し、一部の撮影を実施した。(2)津田編『贈従五位林金兵衛伝』の編纂の過程を知ることができる『林金兵衛家文書』を購入し、整理作業を近代史料学の授業の際に実施した。ここには林金兵衛の地租改正反対運動に関する貴重な史料も含まれており、明治前期の尾張地域史の実証研究にも貢献することができる。(3)東海地域を中心として歴史遺産の発掘と保存、郷土史家の地域史研究、名古屋における郷土史の形成と歴史祭典の実施に関する論文を公表し、この地域の歴史意識の特徴、郷土史家の歴史的役割に関して考察をおこなった。また、暫定的ではあるが、『林金兵衛家文書』の目録を作成できたことは、今後郷土史研究を進めていく上で、基礎的な作業となった。
著者
羽賀 祥二
巻号頁・発行日
2009-03

本研究の目的は、津田応助(愛知)ら東海地域の著名な、精力的な活動をおこなった郷土史家を研究対象とし、彼らの経歴・資料収集の手法・著作の内容分析を行い、その歴史学的方法と地域史学構築へ向けた実践活動を明らかにすることにある。今年度も昨年度に引き続き『林金兵衛家文書』の整理を実施し、8割程度の整理作業終えて、仮目録を作成した。林金兵衛は幕末から明治前期の地域名望家であるが、20世紀前期の愛知県を代表する郷土史家・津田応助による伝記研究や郷土史で注目された。津田の郷土史研究の成果である『贈従五位林金兵衛伝』や『東春日井郡誌』、『小牧町史』などの編纂内容などを再検討する格好の史料群であることが確認できた。また、豊田市史の編纂事業のなかで、明治前期に長く西加茂郡長を務めた田中正幅の郷土史研究・著作に注目して、『挙母藩史』、『西加茂郡地理小誌』、『西加茂郡誌』の編纂と内容について検討した。また旧藤岡町誌の編纂の中でも、20世紀前期における郷土誌を収集し、『藤岡町誌』においてその特徴について記述した。
著者
羽賀 祥二 HAGA Shozi
出版者
名古屋大学文学部
雑誌
名古屋大学文学部研究論集 (ISSN:04694716)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.65-92, 2006-03-31 (Released:2007-06-15)

A lot of “Meisho-Zue”, a kind of gazetteer depicting and describing a specific area with comprehensive perspective, were published since the second half of the 18th century. They include detailed information of religion, people, history and nature with attached pictures. This paper aims that each gazetteer can be valuable material to understand history of environment in each area covered by the gazetteer. Two gazetteers, “Owari-Meisho-Zue” (completed in 1841) and “Choshu-Zasshi” (edited in the middle of 18th century), are analyzed to survey the history of human relations with nature and environment in Owari province. Through this analysis, the paper explores how Japanese social system copes with series of natural disasters in the 19th century.