著者
肥後 靖 土井 康明 茂里 一紘 岩下 英嗣
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,海上浮体が受ける海震による衝撃荷重を合理的に求めるプログラムの開発を第一の目的と実施した。開発にあたっては,模擬的な海震を発生させられる水槽を製作し,海震実験法を確立すると共に,当該海震実験の結果と開発したプログラムによる計算とを対比し,開発プログラムの妥当性を検証しながら海震のメカニズムについて検討した。その結果,まず海震実験によって,圧力波が水面と水底で共振していることが確認できた。また,本研究で開発した数値計算プログラム(時間領域,周波数領域双方)の妥当性を検証するために,実験によって得られた結果と計算との比較を行い,その結果,理論上第一共振に対応する周波数で,実験においては大きな圧力分布を示さず,第二共振に対応する周波数付近で大きな圧力変動が見られた。この実験の傾向と計算の結果の不一致の原因は,圧力波の伝播速度が水温に依存しており,実際と計算で異なっていること,また,水槽の側壁が振動装置からの隔離が完全ではなく,二次的な振動源となっていることが考えられるが,詳細にはさらなる検討が必要である。さらに,当該水槽を使用して海震荷重計測試験も行ったが,これも側壁の振動が原因と思われる雑音が存在し,理想的な実験結果を得られるにいたらなかった。いずれにしても,未だ実施されたことのない実験のために,色々と解決すべき問題はあるが,今後それらを一つ一つ解消し,目的である海震のメカニズム解明に役立てられるという目処は立った。特に,数値計算の検証という意味で本模擬海震発生水槽はこれから威力を発揮すると期待される。
著者
斎藤 公男 肥後 靖 高木 幹雄 小瀬 邦治 松田 秋彦 梅田 直也 小寺山 亘 今井 康貴
出版者
広島大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

沿岸海域を航行する中小型船を対象とし,模型船による波浪中実験や鋼材運搬用内航貨物船の運航性能に関する実態調査を実施し,それらの解析結果より以下の知見を得た。1)船体応答から波浪情報を推定する簡易推定法を提案し,波高計アレイ実験結果と比較したところ,有義波高,平均波周期及び波の主方向に関して,多少のばらつきがあるものの,十分な精度のあることが確認できた。2)上記簡易推定法を模型船曳航実験により得られた推定値と計測値を比較したところ,平均波周期については,全体的によい結果が得られたが,有義波高については追波状態に差がみられた。波の主方向については,30°以内で考えると70〜80%の精度が得られた。3)鋼材運搬用内航貨物船「裕翔丸」(長さ76m,幅12m)に計測器を搭載し,ブリッジで計測した船体運動から船倉内の加速度が概ね推定できることがわかった。4)ハッチカバーレス内航コンテナ船の海水打ち込み水量をダム崩壊理論及び洪水流理論を組み合わせて推定し,それらを模型実験結果と比較したところ,横波中で前進速度を持たない場合においては,計算値と実験値はよく一致した。一方,前進速度がある場合には,定性的に似た傾向を持つものの定量的には理論計算の改良が必要であることがわかった。海水打ち込みの発生頻度については,定量的にも推定値と実験値は良い一致を示した。5)安全性,定時性の向上に関連し,海水打ち込みの発生頻度と運航条件(船と波の出会い角,船速)の関係について,船の運航者の手助けとなる運航状態図を作成した。