著者
能登路 雅子 藤田 文子 シーラ ホンズ 吉見 俊哉 谷川 建司 土屋 由香 矢口 祐人 梅崎 透
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本研究は冷戦期を中心にアメリカの文化外交の実態を学際的に解明することを目的とし、特に1940年代から70年代にかけて米国国務省が民間人や民間機関、ハリウッド映画産業や航空機産業などの企業と緊密な連携を保ちつつ、日本を含むアジア地域で積極的な文化外交を展開した実態を3年間を通じて明らかにした。本研究が特に注目したのは文化外交の政策的内容よりも実践レベルにおける当事者の意識・行動とその調整・抵抗といった変容のプロセスである。第二次大戦後、戦略的重要性を高めたアラスカ・ハワイの州昇格の際にアメリカ政府が製作した広報映画の分析も研究成果のひとつであるが、太平洋地域における植民地統治と文化的影響に関する幅広い研究を進めたことも本プロジェクトの学術的貢献としてあげられる。特にサイパンとパラオ共和国における実地調査を通じて、スペイン・ドイツ・日本・アメリカによる統治が現地に残した文化とアイデンティティにおける多層な影響力をポストコロニアルの視点から理解し、文化外交が一国の国益を超えた文化混淆をもたらす実態を長い歴史的スパンで、またローカルな文化実践との関連で捉えることができた。
著者
大沼 保昭 能登路 雅子 渡辺 浩 油井 大三郎 新田 一郎 遠藤 泰生 西垣 通
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.この2年間の研究活動の成果は、主題に関わる分野の広汎さに対応して極めて多岐にわたるが、その主要な部分は、およそ以下のように要約することができる。2.(1)「国際公共価値」の中核におかれてきた「人権」に対する評価の持つ政治的・文化的バイアスを相対化して議論の可能性を担保するための方法を供給する視点としての「文際的」視点が提示された。(2)(1)の「文際的」視点を踏まえて、「公共性」という概念の多面的な解析が試みられた。J.ハーバーマスの著作の読解を出発点として、ハーバーマスの議論が持つ特殊西欧近代的な性質と、そうした特殊性を超えて普遍的に展開されうる可能性とを、批判的に弁別する必要性が指摘された。(3)(2)の指摘をうけて、「公共性」概念の持つ普遍化可能性を測定するために、中国・日本など非欧米の伝統社会における「公」「おおやけ」観念との比較研究を行った。その結果、「普遍」的形式への志向性こそが、西欧近代文明の持つ特殊性としての重要な意味を持つ、との見通しが得られた。(4)以上のような研究を通じて、「文化帝国主義」という概念の持つ問題点が明らかとなった。アメリカを中心とした欧米文化の「世界化」は、単に政治的経済的な比較優位に基づく偶有的な現象ではなく、欧米文化が持つ「普遍」という形式が重要な意味を持つ。この「普遍」という形式の持つ特殊性の解明が、重要な課題として認識された。(5)例えば「法」は「普遍」という形式を持つが、「法による規律」は必ずしも普遍的な方式ではない。そうした点を踏まえたうえでの、真に普遍性を持ちうる「国際法」概念の再構築の必要性が指摘された。3.2年間にわたる協同研究は、多くの成果を収めた一方で、多くの新しい課題を発見した。新たに発見された課題については、引き続き研究を進めてゆきたい。
著者
能登路雅子
出版者
新曜社
雑誌
観光人類学
巻号頁・発行日
pp.93-102, 1996
被引用文献数
1
著者
能登路 雅子 油井 大三郎 瀧田 佳子 藤田 文子 遠藤 泰生 ホーンズ シーラ
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

本科研最終年度にあたる平成18年度においては、4年間の研究成集のまとめとして、9月に専門家会議を開催し、7月に科研メンバーを集め、専門家会議の準備とともに成果報告書作成のための、最終的なミーティングを行なった。その上で、9月30日(土)に、東京大学駒場キャンパスにおいて、"US Cultural Diplomacy in Asia : Strategy and Practice"(「アジアにおけるアメリカの文化外交:その戦略と実践」)と題した専門家会議を開催した。同会議には、本科研の海外協力者であるSusan Smulyan(Brown Univ. )とThomas Zeiler(Univ. of Colorado, Boulder)を招き、研究分担者である藤田文子(津田塾大学)を加えて、映画、芸術、科学、教育、スポーツ交流など、多様な切り口からの報告を行なった。科研メンバーのほかに、関連分野の研究者、外交機関を含む実務者らが参加し、活発で刺激的な議論が行なわれた。同会議のコメンテーターは研究代表者である能登路雅子が、司会は分担者である遠藤泰生がそれぞれ務めた。この専門家会議のために提出された論文と研究代表者・分担者・協力者の論文をまとめて、平成19年3月に成果報告書として刊行した。