著者
大沼 保昭
出版者
法学協会事務所
雑誌
法学協会雑誌 (ISSN:00226815)
巻号頁・発行日
vol.96, no.3, pp.p266-315, 1979-03
著者
大沼 保昭 斎藤 民徒 川副 令 豊田 哲也 伊藤 一頼 申 惠〓 王 志安 伊藤 剛
出版者
明治大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本共同研究は、多極化・多文明化へと向かう今日の国際社会の現実が、欧米中心の現行国際法秩序の再考を迫っているという問題意識の下、21世紀の国際社会の現実に即した国際法秩序のあり方を模索し、研究の公刊を通じてその理解を広めることを目指すものであった。その際特に、世界人口の過半数を占め、歴史的に豊かな文明を生み出しながらも、国際法秩序の形成にその地位に見合った役割を果たすことなく、欧米中心の国際法秩序の消極的受容者と見なされてきたアジアの存在に着目し、21世紀の国際法秩序におけるアジアの位置、その貢献可能性を明らかにした。
著者
大沼 保昭 MALKSOO Lauri
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2006

日本が国際社会に参加を開始した当時のロシアの国際法的及び外交的な基本的立場の定式化を行った、私と同国人であるエストニア生まれの国際法学者のフリードリッヒ・マルテンス(1845-1909>への関心から私の研究は始まった。日本滞在中、マルテンスの対象とした19世紀後半のロシアの国際法的外交的立場の単なる記述から、ヨーロッパ中心主義的国際法の受容態度の日露両国の比較考察という新たな視角を獲得することができた。この結果、「18世紀より20世紀にいたるロシアの国際法学史」に関する研究の草稿を完成させることができた。結論的には日露両国のヨーロッパ中心主義的な国際法秩序への参加には、従来考えられてきた以上に類似性と相違性がともに存在することが判明した。まず両国はヨーロッパ中心主義的国際法理論のコピーに努めたが、これは同時に西欧に対する自国の周辺性を両国がともに受諾したことを意味する。しかし第一次大戦後(及びロシアでは社会主義革命後)、西欧列強の偽善の一つに過ぎないとして、両国の国際法理論は従来の国際法の普遍性主張に対して懐疑的な方向へと向かっていった。ところが1945年以降、敗戦国日本は普遍主義的、西欧中心的な主流的立場に回帰したが、主要戦勝国であったロシアは1991年のソ連邦崩壊まで反西欧的国際法理論を採用してきた。だが今日では、異なる文明は異なる国際法観を有するので、国際法に関して文際的(文明間の対話の)観点が不可欠である旨主張する大沼保昭教授と類似の主張を行う論者がロシアにおいても存在するに至っている。共産主義イデオロギーが敗退した今日のロシアは、今後、1917年以前の西欧中心主義的な主流的国際法思考に回帰するのか、それとも「人権」等の西欧的概念に対抗しつつ独自の文明観に立つアプローチを展開するのかが最大の問題であるといえる。
著者
大沼 保昭 能登路 雅子 渡辺 浩 油井 大三郎 新田 一郎 遠藤 泰生 西垣 通
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

1.この2年間の研究活動の成果は、主題に関わる分野の広汎さに対応して極めて多岐にわたるが、その主要な部分は、およそ以下のように要約することができる。2.(1)「国際公共価値」の中核におかれてきた「人権」に対する評価の持つ政治的・文化的バイアスを相対化して議論の可能性を担保するための方法を供給する視点としての「文際的」視点が提示された。(2)(1)の「文際的」視点を踏まえて、「公共性」という概念の多面的な解析が試みられた。J.ハーバーマスの著作の読解を出発点として、ハーバーマスの議論が持つ特殊西欧近代的な性質と、そうした特殊性を超えて普遍的に展開されうる可能性とを、批判的に弁別する必要性が指摘された。(3)(2)の指摘をうけて、「公共性」概念の持つ普遍化可能性を測定するために、中国・日本など非欧米の伝統社会における「公」「おおやけ」観念との比較研究を行った。その結果、「普遍」的形式への志向性こそが、西欧近代文明の持つ特殊性としての重要な意味を持つ、との見通しが得られた。(4)以上のような研究を通じて、「文化帝国主義」という概念の持つ問題点が明らかとなった。アメリカを中心とした欧米文化の「世界化」は、単に政治的経済的な比較優位に基づく偶有的な現象ではなく、欧米文化が持つ「普遍」という形式が重要な意味を持つ。この「普遍」という形式の持つ特殊性の解明が、重要な課題として認識された。(5)例えば「法」は「普遍」という形式を持つが、「法による規律」は必ずしも普遍的な方式ではない。そうした点を踏まえたうえでの、真に普遍性を持ちうる「国際法」概念の再構築の必要性が指摘された。3.2年間にわたる協同研究は、多くの成果を収めた一方で、多くの新しい課題を発見した。新たに発見された課題については、引き続き研究を進めてゆきたい。
著者
大沼 保昭
出版者
法学協会事務所
雑誌
法学協会雑誌 (ISSN:00226815)
巻号頁・発行日
vol.97, no.4, pp.p455-536, 1980-04
著者
大沼 保昭
出版者
東京大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

平成20年度は、平成19年度の活動内容を踏まえ、過去3年間の共同研究によって得られた共通の理解を前提としつつ、個別報告及び討論を中心に活動を行った。各個別報告の報告者及びテーマは以下のとおりである。(1)垣内恵美子氏(政策研究大学院大学)「文化遺産の便益評価-誰がどのように保護するべきか-」(4月7日)(2)一寸木英多良氏(国際交流基金企画評価部)「国際文化交流事業に関する評価手法研究の現状と展望について-韓国及びドイツにおける定量・定性的評価調査の事例をもとに-」(5月26日)(3)中川勉氏(外務省広報文化交流部文化交流課長)「外務省・文化外交の現状と課題」(6月27日)(4)篠原初枝氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科)「文化遺産レジームの史的変遷-何から何を保護するのか-」(9月1日)(5)立松美也子氏(山形大学人文学部法経政策学科)「紛争下における文化財保護の国際法」(11月28日)(6)中村美帆氏(東京大学大学院人文社会系研究科文化資源学研究専攻博士課程)「文献購読(Lyndel V. Prott and Patrick J. O'Keefe, "` Cultural Heritage' or ` Cultural Propery' ? ")」(12月16日)。(7)稲木徹氏(中央大学大学院法学研究科公法専攻博士課程)「『国際文化法』を構想する諸説について」(2月24日)。以上のような専門の研究者・実務家による個別法告および討論によって、現行文化遺産保護体制の具体的諸問題がさらに明確化するとともに、現行制度の諸問題に対して具体的な制度設計の指針や政策面での提言を与える基礎となる学際的な理論的研究の現状について共通の理解をさらに深めることができた。以上の研究成果は、今後予定される公表作業にとって極めて重要な意義を有するであろうと思われる。