- 著者
-
舘村 卓
野原 幹司
- 出版者
- 大阪大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2005
パラタルリフトpalatal lift prosthesis(PLP) は, 軟口蓋を挙上して鼻咽腔閉鎖機能を改善する装置であるが, PLPによって音声言語障害が改善できても, 嚥下時の鼻咽腔閉鎖不全症による嚥下障害が改善されていないことにより, 「食べて, 話す」日常生活機能の改善ができていない例も認められる. このようなPLPによる機能改善効果の乖離は, 嚥下時と音声言語活動時での鼻咽腔閉鎖機能の調節様相の相違が考えられる. 本研究では, PLPによる治療法の開発の先行研究として, 嚥下時の鼻咽腔閉鎖機能の調節に, どのような因子が関与するかについて, とくに摂取食物の量, 物性に焦点を当てて検討した.その結果、嚥下時の軟口蓋運動の調節様相は、嚥下された食物の摂取量と物性(とくに粘性) の影響を受け、その影響の発現の様相はニュートン性の有無によって大きく異なることが示された。このことから、PLP 装置による嚥下機能の補完治療を行なうためには, まず食品の持つ種々の因子による口蓋帆咽頭閉鎖機能への影響を明らかにすることが必要であることが明らかとなり, 今回の研究結果は嚥下補助食やトロミ食品の開発に大きく貢献することが示された.