著者
舟橋 恵二 大岩 加奈 河内 誠 岩田 泰 野田 由美子 中根 一匡 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.229-234, 2016-03-25 (Released:2016-05-10)
参考文献数
21
被引用文献数
1

2013年4月~2014年3月に,当院小児科を受診した気道感染症患者215例(6か月~14歳0か月,中央値5歳2か月)からA群溶血性レンサ球菌を215株分離した。全分離株についてT血清型と15種抗菌薬(PCG,AMPC,CTX,CTRX,CDTR,CFPN,PAPM,IPM,EM,CAM,CLDM,MINO,TFLX,LVFX,VCM)のMIC値を測定し,過去にわれわれが行った4回の調査成績と比較した。2013年の血清型別分離率は,12型34%,B3264型30%,1型11%,28型9%の順であった。各血清型の分離率は調査時期により異なったが,12型は過去4回を含むすべての調査において中心を占めていた。EM,CAM,CLDM,MINO,TFLX,LVFXにはそれぞれ58%,58%,49%,5%,8%,2%が耐性を示し,CLDM耐性株は全てEMおよびCAMにも耐性であった。過去4回を含む計1,696株において,βラクタム系抗菌薬およびVCMの耐性株はなかった。EMおよびCAM耐性率は,それぞれ1996年9%,未検討,2001年14%,13%,2003年20%,20%,2006年20%,20%と漸増し,2013年には共に58%まで上昇した。これまでに最も多く分離された12型では,血清型別のEMおよびCAM耐性率が2006年の共に20%から,2013年には共に85%と著しく上昇した。
著者
河内 誠 尾崎 隆男 西村 直子 大岩 加奈 岩田 泰 野田 由美子 中根 一匡 舟橋 恵二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.569-575, 2015-09-25 (Released:2015-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

2012年10月~2014年3月の1年6カ月間に,激しい咳や長引く咳などにより百日咳の鑑別を要した168例を対象に,百日咳の実験室診断法を後方視的に検討した。病原体診断法として全例から後鼻腔ぬぐい液を採取し,百日咳菌分離とloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法による百日咳菌DNA検出を行った。126例については,血清診断法としてPT-IgG抗体価を測定した(ペア血清67例,単血清59例)。実験室診断基準は,菌分離またはDNA検出または血清診断基準に該当したものとした。168例中34例(20%)が百日咳と実験室診断され,初診時年齢の中央値は0.9歳(日齢17~12.3歳)であった。DNA検出は16例(47%),菌分離は9例(26%)であり,菌分離例は全てDNA検出例であった。血清診断基準該当例は31例(91%)であり,18例(53%)が血清診断基準のみに該当した。その中の7例のワクチン未接種幼若乳児(日齢17~3カ月)では,6例がペア血清で抗体価の低下を認め,1例は幽門狭窄症による咳込み嘔吐であった。これら7例は母体の経胎盤移行抗体による血清診断基準偽該当例と考えられた。百日咳の実験室診断法として病原体診断がより確実であり,特に簡便・迅速で感度の高いLAMP法は有用と思われた。
著者
岩田 泰 中根 一匡 河内 誠 野田 由美子 舟橋 恵二 後藤 研誠 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.617-621, 2015-09-25 (Released:2015-11-10)
参考文献数
17

Mycoplasma pneumoniae(Mp)は小児肺炎の重要な起因病原体である。われわれは,肺炎患者からloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法を用いたMp DNA検出検査を実施しており,今回,最近5年間の成績を報告する。2009年4月~2014年3月に,肺炎の診断で当院に入院した小児2,215例から咽頭ぬぐい液を採取し,LAMP法によりMp DNAの検出を行った。2,215例中712例(32%)がMp DNA陽性であった。年齢は1ヶ月~15歳6ヶ月で中央値年齢が7歳2ヶ月であった。年度別のMp DNA検出例数は2009年37例,2010年161例,2011年308例,2012年147例,2013年59例であった。2011年に全国的なMp肺炎の流行があり,当院においても,2011年の9月に最も多い月間発生数をみた。検出例数の暦月別検討にて,春に少なく夏から初冬にかけて多いという季節集積性を認めた。712例全例でペア血清の抗体価を測定し,559例(79%)に抗体陽転または4倍以上の抗体価上昇を認めた。LAMP法によるMp DNA検出は簡便・迅速で感度が高く,小児Mp肺炎の有用な検査室診断法と考えられた。