著者
芝内 孝禎 笠原 成 松田 祐司 福田 竜生 杉本 邦久
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.128-134, 2013-04-30 (Released:2013-05-01)
参考文献数
59

Strongly interacting electrons can exhibit novel collective phases, among which the electronic nematic phases are perhaps the most surprising as they spontaneously break rotational symmetry of the underlying crystal lattice. Our highly sensitive magnetic torque measurements under in-plane field rotation in iron-based superconductors BaFe2(As1-xPx)2 provide evidence for the electronic nematic ordering below a characteristic temperature T*. High-resolution crystal-structure analysis by using synchrotron X-ray reveals small but finite orhthorhobic distortionbelow T* and the orthorhombicity shows a big jump at a lower temperature Ts. The results imply an electronic origin of rotational symmetry breaking, whose relation to superconductivityis discussed.
著者
芝内 孝禎 松田 祐司
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.68, no.9, pp.592-601, 2013-09-05

最近発見された鉄原子とヒ素原子で構成される2次元ネットワークを含む新しい超伝導物質は,銅酸化物が唯一の高温超伝導体ではないことを明らかにした.これらの物質に共通した高い超伝導転移温度は結晶格子の振動を媒介とした従来型の超伝導発現機構では説明できない.一方で,転移温度は低いが非従来型発現機構を持つ超伝導体の代表例としては,f電子を含む重い電子系と呼ばれる物質があるが,新しい鉄系超伝導体の電子状態相図はこの重い電子系の相図とも共通している点も多い.このように鉄系高温超伝導体は,新しい非従来型超伝導研究の舞台となる物質群を提供したと言える.これらの非従来型超伝導体は,電子相関,量子相転移,非フェルミ液体,新奇秩序状態といった凝縮系物理学における主要テーマを含んでいる.鉄系高温超伝導体が発見され約5年が経過したが,最近では高品質な単結晶を用いた精密測定が可能となり,この系の磁気状態,電子状態,超伝導状態の詳細が明らかになってきた.
著者
宍戸 寛明 芝内 孝禎 寺嶋 孝仁 松田 祐司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11, pp.877-881, 2010-11-05 (Released:2020-01-18)
参考文献数
24
被引用文献数
1

ある種の希土類化合物では伝導電子の有効質量が自由電子の数百倍にもに達する「重い電子」による金属状態が形成され,今まで知られている金属の中で最も強い電子相関を持った状態が実現される.これまでの重い電子系化合物はすべて3次元的な電子構造を持っていた.最近我々は分子線エピタキシー法により希土類化合物の人工超格子薄膜を作製し,重い電子系の次元性を3次元から2次元に制御することに成功した.2次元空間の重い電子系(2次元近藤格子)は通常の金属が示すフェルミ液体的振る舞いから大きくはずれた振る舞いを示す.