著者
寺本 紘子 相澤(小峯) 志保子 真島 洋子 泉 泰之 芝田 克敏 黒田 和道 早川 智
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.16-20, 2009 (Released:2009-12-15)
参考文献数
11

漢方薬には,感冒様症状に対する多くの方剤があり,臨床の場面で処方されることも多い.本研究では,感冒様症状に対し処方される代表的な 4 方剤 (葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯) に関して,ヒト末梢血単核細胞 (PBMC) のインフルエンザ HA 抗原特異的 Interferon-gamma (IFN-γ) 産生に対する漢方薬の影響,ならびにインフルエンザウイルス複製に及ぼす影響をELISPOT法とHA法で検討した.その結果,葛根湯,麻黄湯, 小青竜湯, 桂枝湯はいずれも 1-1000μg の範囲で,インフルエンザワクチン接種を受けた 6 名の健常者の PBMC のインフルエンザ HA 抗原特異的 IFN-g 産生を抑制した.小青竜湯は単独で PBMC の viability を低下させた.他の 3 方剤においても,インフルエンザ HA 抗原刺激下では抗原単独刺激に比較してPBMC の viability を低下させた.葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯はいずれもインフルエンザウイルスの複製・増殖を抑制しなかった. 以上の結果より,葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯のインフルエンザ感染に対する臨床症状の改善効果は,特異的免疫応答の増強ではなく,炎症反応の抑制によるものである可能性が示唆された.