著者
早川 智 相澤(小峯) 志保子 髙田 和秀
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.157-159, 2021-08-01 (Released:2021-10-07)
参考文献数
11

COVID-19 のパンデミックは,医学のみならず社会経済的に世界的問題となっている.当初,若年者はSARS-CoV-2 に感染しても,無症状あるいは軽症ですむといわれていたが,主な流行株がδ株に置き換わるにつれて,若年者の感染者が増加し,中には重症化するケースも増えてきた.それに伴い,2021 年 7 月以降,妊婦の感染者数も急増している.幸いなことに SARS-CoV-2は風疹やジカ熱のような催奇性の報告は無いが,妊娠中に重症化すると,母体の治療のために予定日よりも前であっても帝王切開で早期に分娩とせざるを得ない場合もある.子宮内での胎児への感染は極めて稀であるが,出生後に水平感染で感染するリスクはある.現在,全世界で新型コロナウイルスワクチンの接種が進められている.妊婦に対するワクチンの有効性や安全性が明らかになったため,妊婦や妊娠を希望する人への接種も推奨されている.しかし,安全性への不安などを理由に接種を希望しない人も多い.COVID-19 に感染した妊婦に対して投与できる薬剤は限られており,ワクチンも含めて厳重かつ積極的な感染予防が重要である.
著者
寺本 紘子 相澤(小峯) 志保子 真島 洋子 泉 泰之 芝田 克敏 黒田 和道 早川 智
出版者
日本大学医学会
雑誌
日大医学雑誌 (ISSN:00290424)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.16-20, 2009 (Released:2009-12-15)
参考文献数
11

漢方薬には,感冒様症状に対する多くの方剤があり,臨床の場面で処方されることも多い.本研究では,感冒様症状に対し処方される代表的な 4 方剤 (葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯) に関して,ヒト末梢血単核細胞 (PBMC) のインフルエンザ HA 抗原特異的 Interferon-gamma (IFN-γ) 産生に対する漢方薬の影響,ならびにインフルエンザウイルス複製に及ぼす影響をELISPOT法とHA法で検討した.その結果,葛根湯,麻黄湯, 小青竜湯, 桂枝湯はいずれも 1-1000μg の範囲で,インフルエンザワクチン接種を受けた 6 名の健常者の PBMC のインフルエンザ HA 抗原特異的 IFN-g 産生を抑制した.小青竜湯は単独で PBMC の viability を低下させた.他の 3 方剤においても,インフルエンザ HA 抗原刺激下では抗原単独刺激に比較してPBMC の viability を低下させた.葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯はいずれもインフルエンザウイルスの複製・増殖を抑制しなかった. 以上の結果より,葛根湯,麻黄湯,小青竜湯,桂枝湯のインフルエンザ感染に対する臨床症状の改善効果は,特異的免疫応答の増強ではなく,炎症反応の抑制によるものである可能性が示唆された.