著者
西上 智彦 榎 勇人 野村 卓生 中尾 聡志 芥川 知彰 石田 健司 谷 俊一
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.111-114, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
20

低活動状態の1日歩行量を補填し,腓腹筋の廃用性筋萎縮を予防するために運動療法メニューの適切な運動回数を検討した。対象は健常者10名。評価筋は右側腓腹筋内側頭,腓腹筋外側頭とした。腓腹筋筋活動量の測定は(1) 端坐位片足踵上げ,(2) 立位両足踵上げ,(3) 立位片足踵上げ,(4) つま先立ち歩行,(5) 最大等尺性足関節底屈運動とした。分析方法はまず,自由歩行時の筋活動量を(1)から(5)の各動作の筋活動量で除し,各運動療法メニュー1回に対応する歩数を求めた。次に,低活動状態を想定し,6,000歩(片側3,000歩)の筋活動量と対応する各運動療法メニューの回数を求めた。結果,一般臨床で実施されている運動回数では筋萎縮の抑制効果は極めて少ない可能性が示唆された。
著者
西上 智彦 榎 勇人 中尾 聡志 芥川 知彰 石田 健司 谷 俊一
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0866-C0866, 2007

【はじめに】内側型変形性膝関節症(膝OA)における歩行時lateral thrustは膝OA発症の原因・結果ともに関与が認められることから,lateral thrustの改善は膝OAの進行予防に寄与すると考えられる.膝OAに対して臨床で大腿四頭筋を標的とした運動療法が実施されているが,lateral thrustに対する大腿四頭筋の影響は明らかでない.本研究の目的はlateral thrustと大腿四頭筋筋力及び歩行時の内側広筋(VM),外側広筋(VL)の筋活動動態との関係を明らかにし,大腿四頭筋に対する運動療法を再考することである.<BR>【対象】膝OAと診断された15名(平均年齢69.6±7.5歳)とした.病期はKellgren & Lawrenceの分類にてGrade1が4名,Grade2が3名,Grade3が5名,Grade4が3名であった.また,大腿脛骨角(FTA)は178.4±4.0°,膝関節伸展角度は-3.9±5.2°であった.<BR>【方法】(1)hand held dynamometerを用いて,最大等尺性膝伸展筋力を測定し,体重で除した値を大腿四頭筋筋力として採用した.(2)測定は自由歩行とし,連続する3歩行周期を解析対象とした.3軸加速度計を腓骨頭直下,足関節外果直上に貼付し,加速度波形を導出した.まず,足関節外果部の鉛直成分よりHeel contact(HC)を同定し,1歩行周期を100%とした.解析はlateral thrustの指標であるHCから側方成分のピーク値に達するまでの時間(ピーク時間),ピーク値を含む加速度波形の峰数とした.同時に,評価筋をVM,VLとし,歩行時における表面筋電図をそれぞれ導出した.得られた筋電波形より遊脚期における筋活動開始時間(Onset time),立脚期における筋活動終了時間(Offset time)を求めた.また,筋活動開始からHC(Onset-HC),筋活動開始から筋活動終了(Onset-Offset)までの積分値(IEMG)を求めた.それぞれのIEMGに時間正規化・振幅正規化を行い,%IEMGを求めた.<BR>【統計処理】ピーク時間,峰数を目的変数とし,FTA,膝関節伸展角度,大腿四頭筋筋力及びVM,VLのOnset time,Offset time,%IEMG(Onset-HC),%IEMG(Onset-Offset)を説明変数として,Stepwise法による重回帰分析を行った.なお,有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】重回帰分析によりピーク時間に影響を与える因子は認めなかった.峰数に影響を与える因子はVMのOnset timeで標準化係数βは0.621であった(R<SUP>*2</SUP>=0.338,p<0.05). <BR>【考察】lateral thrustに関与する因子として,大腿四頭筋筋力ではなくVMのOnset timeが認められた.本研究結果より,遊脚期におけるVMのOnset timeの遅延を改善させる運動療法の必要性が示唆された.<BR>