著者
味園 春雄 芦内 誠
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.71-78, 2005-02-25 (Released:2017-10-10)
参考文献数
23
被引用文献数
1

最近, 納豆が健康食品として注目されているが, 「納豆の糸」の主成分はポリ-γ-グルタミン酸(PGA)であり, D-グルタミン酸を多く含んでいる. また, PGAには多彩な機能があり, その有用性にも注目が集まっている. しかしながら, 納豆菌のPGA生合成機構は長い間不明であった. 本稿では, PGAの色々な機能や生合成機構について紹介する.1. ポリ-γ-グルタミン酸の構造と機能 PGAはグルタミン酸のγ-カルボキシル基とα-アミノ基がイソペプチド結合で連なったポリマーである. 主として納豆菌(Bacillus subtilis)などのBacillus属細菌によって生産されるが, 好塩古細菌Natrialba aegyptiacaや腔腸動物であるヒドラもPGAを生産する. その分子質量は1万ぐらいのものから100万を越えるものもある(表1). 炭疽菌Bacillus anthraciの生産するPGAはD-グルタミン酸のみから構成されているが, 好アルカリ性細菌Bacillus haloduransやN. aegyptiaca, ヒドラL-グルタミン酸からなるPGAを生産する.
著者
芦内 誠
出版者
高知大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本年度は、ポリ-γ-グルタミン酸(PGA)合成酵素複合体PgsBCAの精密解析のための基盤技術となる酵素効率生産系について検討を加えるとともに、PGA生産に関わる遺伝子解析及び大量生産システムの構築に有用な新規PGA生産菌を検索した。以下に得られた成果を示す。1、PGA合成酵素複合体PgsBCAの大量発現は宿主に対して著しい生育阻害をもたらすことが判明した。そこで、各々の成分、つまりPgsB、-C、及び-Aを単独で生産できる宿主ベクター系を検討した。GST融合ベクターを基本に、PgsBは分子シャペロン共生産システムで、PgsCはPGA生産菌を宿主とする系で、また、PgsAは培養温度の急激な低温シフトが本タンパク質の成熟化に重要であることを見い出した。リポソーム膜を利用したPgsBCAの再構成についても検討し、これにより本酵素複合体の精密解析が可能となった。2、有用PGA生産菌として戦国醤菌を単離した。本菌の膜成分を利用し巨大PGAの酵素合成に世界で初めて成功した。極めてユニークな基質特異性を明らかにするなど、PGA合成に関する重要かつ新奇な情報を得るに至った。また、pgsBCA遺伝子破壊株はPGAの生産能を完全に失ったことから、PgsBCAのPGA合成における必須性が証明された。3、PGAを環境適応因子として生産する生物、ここでは好アルカリ細菌と好塩古細菌のPGAの構造解析を行い、これらが従来知られていなかった新奇なポリアミノ酸であることを明らかにした。さらに、好アルカリ細菌のPGAは納豆菌などのそれとは全く異なる新奇な機構で合成されていることを明らかにした。これらの結果の一部はすでにいくつかの英文誌、和文誌で発表し現在印刷中のものもある。投稿準備中の論文も複数あり、今回の研究成果は、これまでは手探りの感のあったPGA研究の発展に少なからず寄与できたものと考えている。