- 著者
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高木 英典
花栗 哲郎
HAROLD Y. Hwang
笹川 崇男
- 出版者
- 東京大学
- 雑誌
- 基盤研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2004
本研究課題では、強相関エレクトロニクスヘの展開を念頭に置き、モット絶縁体における半導体物理を構築することを目的とした。具体的にはモット絶縁体中の不純物状態、界面障壁、トランジスタ動作の研究を進め、それらが通常の半導体物理からどのような修正を受けるのかということについて実験的検証を進めた。その結果、以下のような成果を得ることに成功した。1.STM/STSを用いた実空間局所電子状態観察を行い、強相関系特有の磁気・軌道臨界状態にある遷移金属酸化物Sr_3Ru_2O_7を対象として不純物状態および界面状態の考察を進めた。意図的に導入したMn不純物の影響の長さスケールが数nmに及ぶことや表面での電子再構成・強磁性臨界性に由来する低エネルギーでの電子状態密度の異常を発見した。2.有機ゲート薄膜を用いた酸化物トランジスタの構築を考案し、そのペロブスカイト酸化物SrTiO_3への適用を試みた。その結果、低温で世界初の電界誘起金属-絶縁体転移を実現し、その状態において1000cm^2/Vsを凌駕する移動度を達成した。また、磁気抵抗の異方性の評価からSrTiO_3界面において厚さ数nm程度の二次元金属層が生じていることを明らかにした。3.遷移金属酸化物の抵抗変化メモリ効果がNiOやCuOなどの単純な二元系遷移金属酸化物で普遍的に観測されることを見出した。そして、平面型素子の作製、その表面状態の直接観察や電圧電流特性の系統的な評価から、抵抗スイッチングが酸化物バルク領域の伝導フィラメント形成に由来していること、伝導フィラメント-金属電極界面における障壁がメモリ評価を生じていることを実験的に明らかにした。