著者
芹澤(松山) 和世 金原 昂平 米谷 雅俊 渡邊 広樹 白澤 直敏 田口 由美 神谷 充伸 芹澤 如比古
出版者
富士山科学研究所
雑誌
富士山研究 = Mount Fuji Research (ISSN:18817564)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-6, 2015

緑藻シオグサ目のフジマリモは富士五湖のうち山中湖、河口湖、西湖の 3 湖ではその生育が確認されているが、精進湖と本栖湖では未確認であった。しかし、西湖・精進湖・本栖湖はもともとひとつの湖であったものが富士山の噴火により分断されてできた湖なので、精進湖や本栖湖にもフジマリモが生育している可能性が高い。そこで、本研究では精進湖と本栖湖にフジマリモが生育しているか否かを確認することを目的に採集器や潜水による調査を行った。その結果、2012 年 6 月に精進湖の水深 2 〜 5 m で、2013 年 11 月に本栖湖の水深 17 〜 22 m でマリモ属様の糸状緑藻を発見した。顕微鏡観察を行った結果、藻体には枝と不定根が認められ、細胞内部には円盤状の葉緑体や多裂型のピレノイド、複数の核が確認された。これらはマリモ属の特徴に一致し、細胞の大きさと形、産地などから、本種をフジマリモと同定した。また、リボソームDNA の塩基配列(ITS 1 - 5 . 8 S-ITS 2 領域)は既知のマリモの配列とほぼ一致した。したがって、本研究により精進湖と本栖湖にもフジマリモが生育していることが明らかになった。
著者
芹澤(松山) 和世 安田 泰輔 中野 隆志 芹澤 如比古
出版者
富士山科学研究所
雑誌
富士山研究 = Mount Fuji Research (ISSN:18817564)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.13-18, 2009-03

2007年9月に山中湖で大型藻類の潜水調査を行ったところ、湖北岸東部のママの森地先の水深1-5mと北東端の平野ワンドの水深2mの湖底で、礫上に着生する糸状緑藻を発見した。その外部形態および内部形態の詳細な観察を実体顕微鏡および生物顕微鏡を用いて行なったところ、マリモの特徴と一致し、フジマリモであると判断した。山中湖ではフジマリモの発見以来、その分布に関する調査が数回行われているが、その分布範囲の縮小や生育環境の悪化が懸念されてきた。そして1993年の調査を最後に本湖ではフジマリモは確認されなくなった。今回、わずかではあるが山中湖では絶滅したと思われていたフジマリモが再発見され、本種の保護と回復のための何らかの対策の必要性が感じられた。
著者
山本 真也 中村 高志 芹澤 如比古 中村 誠司 安田 泰輔 内山 高
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.5, pp.665-676, 2020-10-25 (Released:2020-11-13)
参考文献数
40
被引用文献数
3 5

Lake bottom springs play an important role in maintaining water quality in the Fuji Five Lakes. However, the sources of these springs and the hydrological delivery mechanisms have yet to be identified. To determine the sources of spring water of Lake Kawaguchi, samples were collected directly from lake bottom springs, and oxygen and hydrogen stable isotope ratios were obtained, along with vanadium concentrations. Visual observations and water-quality analyses of the samples reveal that cold and oxygen-rich water is discharged from the lake floor, which is covered by gravel with diameters of 10-50 cm over an area of approximately 9 m (east–west) by about 13 m (north–south). The water temperature of the springs remained relatively constant at around 11.3°C during the stratified period in 2016; however, the temperature fluctuated significantly in 2017, even during the stratified period, suggesting a temporary decrease or stoppage of water being discharged from springs into the lake. Oxygen and hydrogen stable isotopic ratios of lake bottom springs were determined to be higher than those of groundwater in the southern part of Lake Kawaguchi; however, they displayed values close to those of groundwater in the northern part of Lake Kawaguchi, suggesting that spring water primarily originated from groundwater in the Misaka Mountains.