著者
若林 上総 加藤 哲文
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.71-82, 2012-01-31 (Released:2019-04-06)
被引用文献数
3

本研究では発達障害のある高校生、および学級に在籍するその他の生徒によるグループ学習場面に介入し、課題達成行動の生起に対する非依存型、および相互依存型集団随伴性が与える影響、ならびに集団随伴性が仲間間の相互交渉へ与える影響について検討した。また、介入前後には介入実行者である教師の介入受容性(treatmentacceptability)を測定し、その変化も検証した。結果として、非依存型、および相互依存型集団随伴性の適用は、発達障害のある高校生を含めた学級全体の課題達成行動の生起に影響を与え、教師も高い介入受容性を示すことが明らかとなった。一方で、発達障害のある生徒とその仲間間の相互交渉に与えた影響は明らかにされず、ネガティブな副次的作用としてサボタージュ行動が生じることも明らかとなった。以上のことから、有効かつポジティブな副次的作用を発現する集団随伴性に必要な手続き上の課題を議論した。
著者
若林 上総 中野 聡 加藤 哲文
出版者
一般社団法人 日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.145-156, 2016-03-25 (Released:2017-06-22)
参考文献数
15

研究の目的 定時制課程の高等学校において、生徒の課題遂行を高めることを目的とした行動コンサルテーションを実施し、介入厳密性(treatment integrity)を保つのに必要となる支援の検討を行った。研究計画 2学級を対象としてA-B-C-CD-CDEデザインで実施した。場面 定時制高等学校の数学Iの授業に介入した。参加者 コンサルタントとして特別支援教育コーディネーター、コンサルティとして教職経験4年目の数学Iの教科担当、クライエントとして教科担当が指導する2つの学級に在籍する生徒35名が参加した。介入 教科担当の介入厳密性を高めるために、2度の打ち合わせ、遂行する教授行動の毎朝の確認、パフォーマンス・フィードバック、台本の提示を行った。行動の指標 授業ごとの生徒の課題遂行率および教師の教授行動の遂行率を測定した。結果 介入とともに発達障害の生徒を含む各学級の生徒の期間ごとの課題遂行率が上昇の傾向を示した。それに応じて教師の介入厳密性も高まった。結論 コーディネーターの働きかけが教師の教授行動に与えた影響が示唆された。考察 コンサルテーションで生じた教師の教授行動の変容の要因、生徒の課題遂行率の上昇との関連を議論した。研究の限界として厳密な場面の統制ができなかった。
著者
若林 上総 加藤 哲文
出版者
日本行動分析学会
雑誌
行動分析学研究 (ISSN:09138013)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.2-12, 2013-07-31

研究の目的 発達障害のある生徒が在籍する高等学校の学級において、学業達成を支援するために、相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入を実施し、その効果、ならびに介入受容性を検討した。研究計画 ベースライン条件、相互依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた条件、非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた条件によるABCデザインを2クラスで実施した参加者間マルチベースラインデザイン。場面 定時制高校の授業内で行われた漢字テストの場面。参加者 高校1年生の2クラスとそこに在籍する発達障害のある生徒4名。独立変数の操作 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入。パフォーマンス指標 学級全体の強化基準への達成率、漢字テストの得点、および介入受容性尺度得点。結果 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入条件は、学級全体のテスト得点の増加に影響を与えたことが考えられた。各介入条件の介入受容性得点も高得点を示した。結論 相互依存型および非依存型集団随伴性にパフォーマンス・フィードバックを組み合わせた介入条件により、発達障害のある高校生を含んだ学級全体の学業達成を促進した。また、この介入条件の社会的妥当性も示された。