著者
茂木 伸夫 呉橋 美紀 池上 由美子 桃井 祐子 川戸 二三江 島倉 洋造
出版者
一般社団法人 日本環境感染学会
雑誌
日本環境感染学会誌 = Japanese journal of environmental infections (ISSN:1882532X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.5, pp.302-309, 2010-09-24
参考文献数
27
被引用文献数
1 2

&nbsp;&nbsp;歯科診療は,歯牙切削,歯石除去による室内汚染,口腔処置による血液や唾液からの交差感染を起こす危険があり,様々な感染対策の報告があるが,その実態はあまり知られていない.そこで,院内感染対策の施行度を知るために東京歯科保険医協会感染予防対策プロジェクト・チームは歯科感染予防対策に対するアンケート調査を行った.対象は東京歯科保険医協会会員4539人に調査を依頼,回答のあった934人(回答率20.6%)である.質問内容は1. 個人防護具,2. 室内対策,3. 器具の滅菌・消毒,4. 感染対策の実践,5. 感染対策の知識に大別した17項目である.その結果,1. マスクは99%が,手袋は85%が装着していたが,ゴーグルやフェイスシールドは51%にとどまった.2. 手洗いは95%が行っていたが,患者ごとの手袋の交換は54%であった.空気清浄機の設置は57%,口腔外バキュームの設置は31%であった.3. オートクレーブなどの使用が98%,滅菌と消毒を必ず行っている人は71%であったが,印象材などを消毒している人は34%であった.4. 肝炎患者を自院で診療している人は89%であった.5. スタンダードプリコーションを理解している人は29%であった.結論として,個人防護としてゴーグル,フェイス・シールド,室内対策として空気清浄機や口腔外バキュームの設置の必要性が示唆された.また,歯科医療従事者がスタンダードプリコーションの意識を高める必要があると考えられた.<br>
著者
茂木 伸夫 藤野 典子
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.230-235, 2001-08-27
参考文献数
20

都立駒込病院は, 1879年, 当時人類の脅威であった伝染病の病院として創設された経緯があり, 当歯科も長い間, 感染症患者の診療を行ってきたが, 診療時における感染予防対策として, 様々な工夫, 改良を重ね, 現在の診療体系を構築してきたので, その具体的な方法を報告する.<BR>当科では歯科医師, 歯科衛生士各3名 (非常勤も含む), 歯科技工士1名という限られたスタッフのため, 感染症患者の歯科診療は, 院内感染防止上, 診療日, 診療時間を一般患者と分けている.感染症診療日は, 設備面として診療台はビニールや滅菌シーツの利用, ディスポーザブル製品の使用を積極的に奨めている.<BR>具体例として (1) 診療台の椅子やテーブル, ライトなどは市販のビニール袋やディスポーザブルのシーツ, エプロン, 手術用キャップなどを利用してカバーする.(2) タービンヘッド, バキュウムのホースは筒状のビニールでカバーする.(3) 印象物は, ビニール袋の中に入れて, 技工室に運ぶなどである.<BR>これらの対策の実施により, B型肝炎陽性患者 (歯科感染外来の開始) の治療を初めた1981年来, 感染事故は1例も起きていない.