- 著者
-
茂田井 円
- 出版者
- 京都大学ヒマラヤ研究会・人間文化研究機構 総合地球環境学研究所「高所プロジェクト」
- 雑誌
- ヒマラヤ学誌 (ISSN:09148620)
- 巻号頁・発行日
- no.11, pp.258-269, 2010-05-01
雲南の日常食に欠かせない米線. 文献では6 世紀前半に北魏の賈思勰が著わした『斉明要術』にもその製法は伝えられている. 米を挽いた粉から作られる麺は, 中国南方地域で幅広く作られている. その呼び名は様々で地域によっては「米粉」という名もある. 米は主にインディカ米を使用する. 雲南では乾麺を戻したものではなく, 「発酵」させた生の米線に人気が集まっている. その雲南の米線を使った特徴的な料理の一つに「過橋米線」がある. 過橋米線は, 清代後期, 雲南中西部の都市・建水で, 中国北方料理である薄切りの羊肉を使うしゃぶしゃぶ火鍋料理(涮羊肉)をヒントに発明されたと思われる. 食卓に生ものを置いても平気な文化的バックボーンが雲南にあったことも, 各種ライス・ヌードル文化圏の中で, 雲南にこの料理が芽生えた理由となるだろう. それが滇越鉄路の開通をきっかけに, 建水・蒙自・個旧の三角地帯から昆明へと進出. 現在では中国各地, また日本へまでも「雲南・過橋米線」が広まった.