著者
本田 護 福岡 講平 津村 悠介 森 麻希子 入倉 朋也 渡壁 麻衣 平木 崇正 井上 恭兵 三谷 友一 大嶋 宏一 荒川 ゆうき 福地 麻貴子 本田 聡子 坂中 須美子 田波 穣 中澤 温子 栗原 淳 康 勝好
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.455-458, 2021 (Released:2022-02-08)
参考文献数
20

MEK阻害剤であるtrametinibは,BRAF遺伝子異常を有する視神経膠腫に対する有効性が期待されているが,本邦において小児の視神経膠腫に対する本薬剤の使用経験は極めて乏しい.今回我々はがん遺伝子パネル検査によってKIAA1549-BRAF融合遺伝子が検出された治療抵抗性の視神経膠腫に対してtrametinibを使用した症例を経験したため報告する.症例は8歳女児で生後7か月に視神経膠腫と診断された.診断後から合計5種類の化学療法と生検を含めて4回の手術療法を受けたが腫瘍は増大傾向であった.水頭症による意識障害が進行したが,髄液蛋白濃度が高く脳室腹腔シャントは施行できなかった.がん遺伝子パネル検査でKIAA1549-BRAF融合遺伝子が検出され,trametinibを2か月間投与した.投与期間中は画像上腫瘍増大の抑制効果を認め,髄液蛋白濃度も低下した.NCI-CTCAE version 5においてGrade 3以上の有害事象を認めなかった.本邦におけるtrametinibの有効性と安全性について,今後の症例の蓄積が重要と考えられる.
著者
青木 孝浩 康 勝好 川口 裕之 久保田 泰央 大山 亮 森 麻希子 荒川 ゆうき 磯部 清孝 野々山 恵章 花田 良二
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.440-443, 2015

ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ<sup>®</sup>,以下GO)は,本邦において2005年にCD33陽性の再発・難治性急性骨髄性白血病(以下AML)に対して保険承認された.しかし,成人AMLに対しては用法・用量が定まっている一方で,小児AMLに対する用法・用量は定まっていない.我々はこれまでに寛解導入療法後に非寛解であった小児難治性AML4症例に対し,分割GO単剤療法(9 mg/m<sup>2</sup> 3分割投与)を行い,4例中2例でGO投与後に完全寛解となった.分割GO単剤療法中にGrade 2のinfusion reactionを2例で認め,肝中心静脈閉塞症(以下VOD)は認めなかった.Grade 3の感染症を全例で認めたが,他に重篤な非血液毒性は認めなかった.分割GO単剤療法後は全例で同種造血幹細胞移植(以下HSCT)を行い,3例が再発した.治療関連死亡はなかったが,HSCT後に2例でVODを発症した.有害事象を軽減しうる分割GO単剤療法であっても感染症やその後のHSCT時におけるVODには十分な注意が必要である.