- 著者
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荒川 孝
奴田原 紀久雄
- 出版者
- 日本泌尿器内視鏡学会
- 雑誌
- Japanese Journal of Endourology (ISSN:21861889)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.1, pp.1, 2015
従来の上部尿路結石破砕治療の評価は,1989年に日本泌尿器科学会雑誌に公表された故園田教授等による『Endourology・ESWLによる結石治療の評価基準』が大筋で用いられていた.しかし近年においては,この評価基準が公表からあまりにも時間が経過しているためその存在が忘却され,各学会発表,各掲載論文がそれぞれ異なる基準により報告されていることが多く統一性が失われ,それ故それぞれの治療成績の比較が正当に行われているか否かに疑問が残される.また,結石の大きさの評価法も時代とともに変化してきている.これらの事柄を修正し,AUA,EAUいずれの最新ガイドラインでも示されていない,時代に即応した『新たな尿路結石治療効果判定』を提案するべく,2011年秋頃より荒川と東先生,麦谷先生,山口先生の4人の有志により模索が始められた.これは新たなルール作成の作業であるため,慎重に時間と手間を掛け,2013年の日本尿路結石症学会第23回学術集会と第27回日本泌尿器内視鏡学会総会,2014年の第102回日本泌尿器科学会総会と第79回日本泌尿器科学会東部総会の4つの学会において,各学会会長のご理解とご協力のもと『新たな尿路結石治療効果判定の提案』と題した内容でシンポジウムを開催させて頂いた.繰り返し会員の先生がたのご意見を伺いながらversion upし,最終的に今回の本誌特集に於いて論文発表をさせて頂いた.その過程で先の4人に加え,宮澤先生,奴田原先生にもご参加頂き,合計6人が今回の特集の構成メンバーとなった.本特集では,最初に宮澤先生より『国内外における結石破砕治療評価の現状について』と題してご報告頂く.現状では,治療前の結石の大きさの表現方法はKUBや超音波検査による結石の長径,近年の尿路結石診断で多用されるCT検査を用いた結石の表面積を用いたものや,3次元画像を用いた結石の体積など様々である.小さな結石であれば大きな誤差は少ないかもしれないが,大きな結石になると,単純な長径だけの比較と表面積や体積の比較では大きな違いが生じてくる.この疑問に答えるべく東先生は『結石の大きさの術前評価と残石の評価法』において結石の大きさを体積表記に統一する提案をされている.様々なデータ解析を用いて,CTを実施していない症例に於いても簡便に体積の近似値を求める計算式を提示されている.更には,大きな結石に於いては残石率という概念の提案も併せてなされている.結石の外科的治療は完全摘出が基本であろうが,評価の一助となろう.また,治療結果の判定においては,stone freeのみが治療成功の評価なのであろうか?との疑問もある.つまり結石の存在により生じた尿の通過障害の解除は評価されなくてよいのであろうかという点である.これにつき麦谷先生は『結石治療後の尿路閉塞解除の評価について』の中で,結石による閉塞の解除が確認できた症例を成功例とする提案を行っている.最後に山口先生より我々6名の提案を具体的な表にして示して頂いた.これらの提案は,学会の正式な委員会設置によるものではないので拘束性は無い訳であるが,一つでも多くの学会報告,論文作成においてお役に立つ事が適うならば,我々6名望外の喜びである.なお,この特集の根幹をなす東先生の論文に於ける共同著者である山田先生に対し,膨大な数の症例のデータ分析に多大なるご尽力を頂いた事に対し,深く感謝申し上げる次第である.