著者
宮地 良樹 中村 元信 荒川 明子
出版者
京都大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2007

円形脱毛症の中には、多発型円形脱毛症あるいは全頭部に拡大する全頭型脱毛症、眉毛や体毛の脱毛もある汎発型脱毛症があり、ステロイドの外用、内服、局所免疫療法、光線療法などの既存の治療法に反応しないことが多い。私たちは円形脱毛症の病因が制御性T細胞の機能不全であるという仮説のもと、坂口志文教授らとの共同研究で円形脱毛症患者の末梢血を解析し、有意な制御性T細胞減少があることをすでに見いだしている。自己免疫疾患マウスに制御性T細胞を移入すると自己免疫反応を抑制できるため、制御性T細胞操作の治療への応用が期待されている。我々はまず円形脱毛症を自然発症するC3H/HeJマウスの皮膚局所へ制御性T細胞を投与し、人体に応用する前にまず、円形脱毛症モデルマウスC3H/HeJマウスへの治療効果を検討する。(1)C3H/HeJマウスCD4陽性細胞をソーティングする。(2)FoxP3発現用レトロウイルスをトランスフェクト(3)C3H/HeJマウスの末梢血、脾臓、胸腺を採取する。(4)CD4陽性CD25陽性細胞をソーティングする。(5)FoxP3発現用レトロウイルスをトランスフェクトしたCD4陽性細胞とCD4陽性CD25陽性制御性T細胞をそれぞれC3H/HeJマウスの脱毛斑に局所投(6)外毛根鞘細胞のMHCclassI、II蛋白の発現量、インターフェロンガンマの産生を定量する。
著者
加畑 大輔 谷崎 英昭 荒川 明子 谷岡 未樹 高倉 俊二 大楠 清文 宮地 良樹 松村 由美
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.14, pp.3337-3342, 2011-12-20 (Released:2014-11-13)

11歳,男児.初診の3カ月前に右上腕に無症候性の皮膚結節が出現し,次第に潰瘍化し軽度疼痛を伴うようになった.他院にて切除術施行されたが再度潰瘍を呈したため2010年4月当科を受診した.潰瘍部の病理組織中に多数の抗酸菌を認め,病変部組織の遺伝子解析にて,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuenseに特異的な遺伝子配列を検出したため,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuense によるBuruli潰瘍と診断した.2%小川培地およびMGIT液体培地にて30°Cで培養したところ,6週間後に黄色コロニーの発育を認めた.リファンピシンとクラリスロマイシン投与開始にて潰瘍の増大は止まったものの,縮小傾向に乏しかったため,抗菌薬を継続したまま,投与2カ月後病変部を切除し分層植皮術を施行した.抗菌薬は計6カ月間で終了し,投与終了後1カ月経過した時点で再発を認めない.Buruli潰瘍は,本来熱帯地方に分布するM. ulceransという非結核性抗酸菌感染症である.しかし,近年その亜種であるM. shinshuenseによる皮膚潰瘍の報告が本邦で増加しており,皮膚潰瘍の鑑別診断のひとつとして念頭におく必要がある.