著者
川島 眞 黒川 一郎 林 伸和 渡辺 雅子 谷岡 未樹
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.497-507, 2018 (Released:2018-06-27)
参考文献数
5

近年本邦の尋常性痤瘡治療薬,特に外用薬の選択肢が充実し,欧米の治療水準に到達した.それらを選択使用するための治療ガイドラインも策定されている.しかしながら,実地臨床の場では,個々の患者の多彩な症状に応じて薬剤選択を行うが,ガイドラインでの推奨度に応じて自動的に決定できるものではなく,様々な患者背景を考慮して試行錯誤を繰り返すこともある.そこで,日常診療上でしばしば遭遇する尋常性痤瘡の症例を写真で提示し,その患者の年齢,生活様式,経済状況なども考慮したうえで,いかなる治療薬を選択すべきかについて5名の痤瘡治療に精通した皮膚科医により案を作成し,それを27名の痤瘡治療に積極的に取り組む皮膚科医で討議し,コンセンサスを作り上げた.中高生,青年期,社会人の各年代層の顔面の尋常性痤瘡を6ケース,体幹部の尋常性痤瘡を2ケース,特殊な例として下顎部の痤瘡1ケース,アトピー性皮膚炎の合併2ケース,炎症後紅斑,炎症後色素沈着を各1ケース,全体として13ケースについて検討した結果をここに報告し,診療の参考としていただきたいと考える.
著者
林 伸和 佐々木 優 黒川 一郎 谷岡 未樹 古川 福実 宮地 良樹 山本 有紀 川島 眞
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.629-634, 2021 (Released:2021-10-06)
参考文献数
3

経口イソトレチノインは,皮脂の分泌と毛包漏斗部の角化異常を抑制することで痤瘡を改善することから,海外では集簇性痤瘡あるいは重症・最重症の尋常性痤瘡に対して推奨されているが,本邦では未承認である.そこで,本邦における集簇性痤瘡や重症・最重症の尋常性痤瘡の患者数や現状での治療状況,イソトレチノインに対する考え,使用実態などについて日本臨床皮膚医会(日臨皮)と日本美容皮膚科学会(美容皮膚)の会員を対象に調査を行った. 日臨皮会員4,539名中565名(12.4%),美容皮膚会員2,711名中の158名(5.8%)から回答を得た.その結果,「男性に好発し、顔面のみならず胸背部に、多数の面皰と嚢腫・結節の多発をみる難治性の痤瘡ないし膿皮症の一型」と定義した集簇性痤瘡を両学会会員の85.6%が経験し,うち48.6%が年間1~2例を経験していた.また,経験者の81.7%は「標準治療だけでは治療不可能」と回答し,81.5%は経口イソトレチノインが「必要」,あるいは「必要性がとても高い」と考えていた.従来の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の尋常性痤瘡については,90.8%が何らかの形で経験しており,そのうちの75.0%が経口イソトレチノインが「必要」あるいは「必要性が高い」と回答していた.また,何らかの手段でイソトレチノインを現在処方している医師の割合は全体の5.1%(美容皮膚会員15.8%,日臨皮会員2.1%)であった. 本調査では,集簇性痤瘡および従来の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の尋常性痤瘡は,稀ではあるが皮膚科医が経験する症状であり,それに対して海外のガイドラインで推奨されている経口イソトレチノインへの期待が高いことが示唆された.経口イソトレチノインの必要性は高く,一部の皮膚科医がすでに処方している実態がある.しかし,催奇形性等の重大な副作用を伴うことから,十分な管理の下で経口イソトレチノインは使用されるべきである.現状の使用状況をより好ましい形にするために,安全性と有効性を確認する臨床試験を経たうえで,早期に薬事承認を目指す必要があると考えた.
著者
谷岡 未樹 松永 佳世子 秋田 浩孝 片山 一朗 乾 重樹 石井 正光 小林 裕美 相場 節也 菊地 克子 石川 治 永井 弥生 照井 正 高柳 たかね 古江 増隆 吹譯 紀子 加藤 敦子 山﨑 貞男 宮地 良樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.170-182, 2011 (Released:2012-10-23)
参考文献数
8
被引用文献数
2

顔面に尋常性ざ瘡のある女性患者を対象に,低刺激性・低アレルギー性メーキャップ化粧品dプログラム®スムースアップファンデーション(パウダリー),スムースアップファンデーション(リキッド),スムースアップフェースパウダー(おしろい)の安全性を評価することを目的とする4週間の使用試験を実施した。解析対象例(85例)における副作用発現率はパウダリー2.1%,リキッド0%,おしろい0%で,副作用の症状は軽微であった。試験開始時と比較した終了時におけるざ瘡の炎症性皮疹(紅色丘疹,膿疱)および非炎症性皮疹(面皰)数は有意に減少した。Dermatology Life Quality Index を用いた生活の質の評価は「総合」「症状・感情」「レジャー」のスコアが有意に改善された。Visual Analogue Scal (VAS) による顔面の皮膚状態に関する満足度も有意に上昇した。以上の結果より,本試験試料の低刺激性・低アレルギー性メーキャップ化粧品は女性の尋常性ざ瘡患者が安全にかつざ瘡を悪化させることなく使用することができるだけでなく,生活の質を改善すると結論した。(皮膚の科学,10: 170-182, 2011)
著者
加畑 大輔 谷崎 英昭 荒川 明子 谷岡 未樹 高倉 俊二 大楠 清文 宮地 良樹 松村 由美
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.121, no.14, pp.3337-3342, 2011-12-20 (Released:2014-11-13)

11歳,男児.初診の3カ月前に右上腕に無症候性の皮膚結節が出現し,次第に潰瘍化し軽度疼痛を伴うようになった.他院にて切除術施行されたが再度潰瘍を呈したため2010年4月当科を受診した.潰瘍部の病理組織中に多数の抗酸菌を認め,病変部組織の遺伝子解析にて,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuenseに特異的な遺伝子配列を検出したため,Mycobacterium ulcerans subsp. shinshuense によるBuruli潰瘍と診断した.2%小川培地およびMGIT液体培地にて30°Cで培養したところ,6週間後に黄色コロニーの発育を認めた.リファンピシンとクラリスロマイシン投与開始にて潰瘍の増大は止まったものの,縮小傾向に乏しかったため,抗菌薬を継続したまま,投与2カ月後病変部を切除し分層植皮術を施行した.抗菌薬は計6カ月間で終了し,投与終了後1カ月経過した時点で再発を認めない.Buruli潰瘍は,本来熱帯地方に分布するM. ulceransという非結核性抗酸菌感染症である.しかし,近年その亜種であるM. shinshuenseによる皮膚潰瘍の報告が本邦で増加しており,皮膚潰瘍の鑑別診断のひとつとして念頭におく必要がある.