著者
荒木 寿友
出版者
同志社女子大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究の目的は、学校コミュニティの形成を図る一つの方法としてL.コールバーグ(Lawrence Kohlberg: 1927-87)のジャスト・コミュニティアプローチ(Just Community Approach)を用いることによって、様々な学校教育階梯におけるコミュニティ形成のためのカリキュラムをデザインすることにあった。ここでいうカリキュラム・デザインとは、教育課程編成を意味するだけではなく、隠れたカリキュラム、及びコミュニティの空間等のデザインも含まれる包括的な用語である。総括にあたる本年度は、とりわけこどもの「学び」が現実の生活の中で実感できるためのカリキュラムデザインについて研究を行った。本年度は、昨年度に引き続き、ワークショップを行った(2007年7月1日実施)。本ワークショップでは、大学近隣のこども(3歳から12歳まで)35名を大学へ招き、ダンボールを媒介として、こどもの遊びを中心とした活動を行った。具体的には、ダンボールでフロアに巨大迷路を造り、それぞれポイントとなる場所に子どもたち自身に「秘密基地」をつくってもらうという活動である。本ワークショップを通じて、人と人、人とモノの関わり合いの中から、こどもにとっての「学び」を捉えることができた。つまり、「学び」とは決して自分自身がモノと向き合うだけで成立するものではなく、そこには他者との関わりが必要であるし、またそれによって過去の自分がイメージしていたことをより具体的に表現することなのである。
著者
荒木 寿友
出版者
日本道徳教育学会
雑誌
道徳と教育 (ISSN:02887797)
巻号頁・発行日
no.336, pp.119, 2018 (Released:2020-08-01)

本稿では、道徳の授業において用いられる教材、とりわけ読み物教材が資質・能力を育んでいく教材になりえているのかについて検討し、これからの道徳授業においてどのような教材が必要となってくるのか示すことを目的とした。この検討にあたり、まず道徳の授業における教育内容と教材の関係、すなわち「教材を教える」のか「教材で教える」のかについて概観した。次いで、道徳の授業において定番となっている読み物教材を取り上げ、それらの多くは具体的な望ましい姿が描かれ、明示的にも暗黙的にもそれを児童生徒に伝達していることから、そのような読み物教材を「価値伝達型読み物教材」とした。価値伝達型教材は教授主義に基づいており、それに代わるものとして認知主義、状況主義などを取り上げ、 それらに基づく教材の可能性を示した。最終的に、資質・能力を育んでいく道徳の教材「資質・能力育成型教材」について考察を加えた。