著者
菅 寿美 坂井 三郎 豊福 高志 大河内 直彦
出版者
国立研究開発法人海洋研究開発機構
雑誌
JAMSTEC Report of Research and Development (ISSN:18801153)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.23-33, 2013 (Released:2013-11-30)
参考文献数
21
被引用文献数
3

近年,生物石灰化機構を調べる研究において,生物の殻と生育している環境水中の炭酸系とのつながりが注目されるようになり,炭酸系を継続的に分析する必要性が高まってきた.試水中の炭酸系を把握するためには,pHとアルカリ度とを分析するのがもっとも簡便である.これは飼育実験のように採水量がごく少量に限られる試水に適用するにも都合が良い.本報告では,海洋化学の分野で用いられているアルカリ度の一点法をもとに,試水量を1 mLにまで減らした分析手法を提案する.重量測定により量り取り量を補正すると,アルカリ度の繰り返し精度は相対標準偏差で0.1~0.2%となった.重量補正なしでは相対標準偏差で0.1~1.0%となった.参照海水を常に試水間に挟み分析することにより,日々の値の系統誤差は補正できることがわかった.この手法を用いれば,pHメータのみを用いて,微量な試水中の炭酸系を生物石灰化メカニズムの解明に十分な精度で継続的に知ることができる.
著者
石村 豊穂 角皆 潤 長谷川 四郎 中川 書子 大井 剛志 北里 洋 菅 寿美 豊福 高志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2013 (Released:2013-08-31)

底生有孔虫殻の同位体組成は海洋環境指標として有用であるが,同位体非平衡(vital effectなど)の複雑さや,分析技術の限界という問題点があった.本研究では微量炭酸塩安定同位体比測定法を用いて個体別同位体組成を明らかにし,有孔虫という分類群全体の同位体非平衡の特徴を理解することをめざした. 分析結果から,種内の個体分散が小さい種ほど直接的に低層水のδ13C・δ18Oを推定する指標となることがわかった.また,殻重量が重く成長度合いが高い個体ほど,一個体でも環境指標として有効な指標となることがわかった.一方,有孔虫全体で同位体非平衡の特徴を図示すると,種毎で検討するよりも,有孔虫という分類群全体で捉えることにより,そのトレンドが明確に浮き彫りになることがわかる. また本研究では,vital effectが強い種でも同位体組成の個体分散をもとにして底層水の安定同位体組成を推定することが可能であることもわかった.