著者
石村 豊穂 角皆 潤 長谷川 四郎 中川 書子 大井 剛志 北里 洋 菅 寿美 豊福 高志
出版者
一般社団法人日本地球化学会
雑誌
日本地球化学会年会要旨集 2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
巻号頁・発行日
pp.18, 2013 (Released:2013-08-31)

底生有孔虫殻の同位体組成は海洋環境指標として有用であるが,同位体非平衡(vital effectなど)の複雑さや,分析技術の限界という問題点があった.本研究では微量炭酸塩安定同位体比測定法を用いて個体別同位体組成を明らかにし,有孔虫という分類群全体の同位体非平衡の特徴を理解することをめざした. 分析結果から,種内の個体分散が小さい種ほど直接的に低層水のδ13C・δ18Oを推定する指標となることがわかった.また,殻重量が重く成長度合いが高い個体ほど,一個体でも環境指標として有効な指標となることがわかった.一方,有孔虫全体で同位体非平衡の特徴を図示すると,種毎で検討するよりも,有孔虫という分類群全体で捉えることにより,そのトレンドが明確に浮き彫りになることがわかる. また本研究では,vital effectが強い種でも同位体組成の個体分散をもとにして底層水の安定同位体組成を推定することが可能であることもわかった.